環境車台頭がせかす部品会社の「脱自動車」
自動車エンジンの小型化や電気自動車(EV)の将来的な台頭をにらみ、エンジン部品を手掛けるメーカーが外装部品や非自動車分野への参入を加速させている。
「この先10年、20年は大丈夫だが、30年後はどうなるかわからない。だからこそ今のうちに手を打つ必要がある」。自動車エンジン部品のピストンリングを製造するTPRの山岡秀夫社長はこう懸念を示す。
同社は4月に81億円を投じて、自動車用樹脂外装部品を手掛けるファルテックの株式57・4%を取得し、子会社化した。これまでエンジン部品に特化してきたTPRが生産品目がまるで異なる樹脂部品会社を買収したのは、エンジン部品の生産に依存しない体制を整えたいという狙いからだ。
調査機関IHSオートモーティブによると、世界の自動車販売は2017年には新興国の需要増などで1億台を突破する見通しだ。(12年は7830万台の見込み)。
ただ、今後は環境対応をにらみ、排気ガスを抑制した小型車やハイブリッド車などが主流になってくる。結果、エンジン気筒数が減ることなどにより、たとえばTPRのピストンリングのような部品は搭載点数が減少してしまう。自動車需要が伸びたとしても、エンジン部品メーカーの成長は限られる。
それどころか、将来的にEVが台頭すればエンジンそのものが不要になる。このままエンジン部品のみ生産し続けていたら、長期的にはジリ貧になるのは目に見えている。TPRの山岡社長が危機感を抱く背景にはこうした事情がある。