経営者とは詩人であり、経営とは「こうありたい」という理想を詩に書くことです。その詩が共感を呼ぶものであればあるほど、多くの人々が応援してくれます。
私が最初の店を出したときに考えたのは「山形にあるパリの味」。まあ、ほとんどほらでしたが……。何よりも「東京にある店には絶対負けない」というプライドで頑張ってきました。それが周囲の「父性本能」をくすぐったのかなと思います。
「なくてはならない会社になる」というのも、私が思い描いた一つの目標でした。昔、こういう夢を何回も見ました。大きなヘリコプターがシベールの店に飛んできて、店舗を丸ごと運び去ってしまう。ところが、お客様は平然と、何も気づかずに店のあった場所を通り過ぎていく──。夢から覚めて、愕然とした覚えがあります。
まだまだ負けないぞというのが私からのメッセージ
もちろん、経営者は詩を書く能力だけでなく、自分の詩を木や石に彫刻するためのノミを持つ必要があります。ただし、そのノミは他人から借りてくることができる。私は昔から読書好きで、書物から多くの知恵を得ました。対立する意見を持つ著者の本を読み比べ、双方の理論を突き合わせて、自分なりの「補助線を引く」という作業をよくしました。
ただ、これまでの経営を振り返ってみると、社内の人間に十分に議論をさせ、その意見を基に自分が最終的な決断を下すというプロセスを、もう少し取り入れるべきだったと反省しています。シベール会長を辞めて作った会社では、山形県出身の著名な工業デザイナーである奥山清行さんや、東北芸術工科大学の先生方に取締役として入ってもらいました。彼らとの議論は楽しいし、事業計画を作るうえで役に立ちます。経営者は独断が過ぎてはダメですね。
若い人材には大いに期待しています。シベール本社の玄関には「ここに来れば日本の未来が信じられる。今時の若者は大したもんだ」という標語を掲げています。ITに関する知識や新しい発想など、本当に今の若者の能力はすばらしい。
だから、自分で自分の限界を決めないでほしい。「相対的積極」というのがいちばんよくない。「これぐらいの給料だから、これぐらいの仕事で十分だ」というのでは、自分の能力を伸ばせないし、会社もその人材を活かしきることができません。
私も先日、71歳になりましたが、新会社で「もう一度、ベンチャー」です。まだまだ負けないぞというのが、若い人たちに対する私からのメッセージですね。
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