若者は自分で限界を決めないで

シベール特別顧問・熊谷眞一氏④

くまがい・しんいち 1941年生まれ。高校卒業後、仙台や東京などでの修業を経て、66年に洋菓子の店シベールを創業。70年有限会社シベールを設立し社長に就任(81年株式会社化)。2010年会長。11年特別顧問。公益財団法人弦地域文化支援財団の代表理事も務める。

経営者とは詩人であり、経営とは「こうありたい」という理想を詩に書くことです。その詩が共感を呼ぶものであればあるほど、多くの人々が応援してくれます。

私が最初の店を出したときに考えたのは「山形にあるパリの味」。まあ、ほとんどほらでしたが……。何よりも「東京にある店には絶対負けない」というプライドで頑張ってきました。それが周囲の「父性本能」をくすぐったのかなと思います。

「なくてはならない会社になる」というのも、私が思い描いた一つの目標でした。昔、こういう夢を何回も見ました。大きなヘリコプターがシベールの店に飛んできて、店舗を丸ごと運び去ってしまう。ところが、お客様は平然と、何も気づかずに店のあった場所を通り過ぎていく──。夢から覚めて、愕然とした覚えがあります。

まだまだ負けないぞというのが私からのメッセージ

もちろん、経営者は詩を書く能力だけでなく、自分の詩を木や石に彫刻するためのノミを持つ必要があります。ただし、そのノミは他人から借りてくることができる。私は昔から読書好きで、書物から多くの知恵を得ました。対立する意見を持つ著者の本を読み比べ、双方の理論を突き合わせて、自分なりの「補助線を引く」という作業をよくしました。

 ただ、これまでの経営を振り返ってみると、社内の人間に十分に議論をさせ、その意見を基に自分が最終的な決断を下すというプロセスを、もう少し取り入れるべきだったと反省しています。シベール会長を辞めて作った会社では、山形県出身の著名な工業デザイナーである奥山清行さんや、東北芸術工科大学の先生方に取締役として入ってもらいました。彼らとの議論は楽しいし、事業計画を作るうえで役に立ちます。経営者は独断が過ぎてはダメですね。

若い人材には大いに期待しています。シベール本社の玄関には「ここに来れば日本の未来が信じられる。今時の若者は大したもんだ」という標語を掲げています。ITに関する知識や新しい発想など、本当に今の若者の能力はすばらしい。

だから、自分で自分の限界を決めないでほしい。「相対的積極」というのがいちばんよくない。「これぐらいの給料だから、これぐらいの仕事で十分だ」というのでは、自分の能力を伸ばせないし、会社もその人材を活かしきることができません。

私も先日、71歳になりましたが、新会社で「もう一度、ベンチャー」です。まだまだ負けないぞというのが、若い人たちに対する私からのメッセージですね。

ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • グローバルアイ
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • 今見るべきネット配信番組
  • コロナ後を生き抜く
トレンドライブラリーAD
人気の動画
「人のために働く職業ほど低賃金」な根深い理由
「人のために働く職業ほど低賃金」な根深い理由
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
「話が伝わらない人」と伝わる人の決定的な差
「話が伝わらない人」と伝わる人の決定的な差
「説得力のある話ができる人」と「説得力のない人」の差
「説得力のある話ができる人」と「説得力のない人」の差
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
激動相場に勝つ!<br>株の道場

6月18日発売の『会社四季報』夏号が予想する今期業績は増収増益。利益回復に支えられる株価が上値を追う展開になるか注目です。本特集で株価が動くポイントを『会社四季報』の元編集長が解説。銘柄選びの方法を示します。

東洋経済education×ICT