実践で見えてきた、タブレット学習の「功罪」 データが生徒の「知の集合体」になっていく
先生は教室を回りながら「人の意見を自分の意見に足して」と指示を出しながらも、生徒の質問に答え、話し合いが滞っているグループに疑問を投げかけ、生徒が考えを再構築するサポートにまわっていた。
タイマーが鳴ると話し合いの時間は終了。電子黒板には、以下のような生徒の意見が投影された。
「盗っ人になる決意が早まっただけで、出会わなくても盗人になっていた」「悪を働いたら、何か代償を払わなければならない。罪悪感を抱き、常に危険がつきまとう。でも正当な働きは多くの達成感を得られる」「人はそれぞれの価値観を基に選択しているが、それが悪であっても正義であってもどちらが正しいか決めることができないことを問いかけている」
授業終了。黒板は授業開始時から何も書き加えられず、ICT機材のみで完結した。
1学期は紙のノートを使い、一斉授業を行っていたという山信先生は、生徒からの「学び合い学習をしたい」という要望もあり、2学期からAL型授業を取り入れた(以下は授業を終えての、山信先生のコメント)。
解答の「書き直し」や「付け加え」が容易に
投票の目的は、主体的に学習に取り組ませること。AL型授業では人の考えを聞いて、自分の中の考えや意見が再構築されていくこと、自分の考えが変化していくことを経験してほしい。
自分たちで課題を解決させたいので、話し合いが止まっているグループにアドバイスするなどサポートに回るよう努めている。状況に応じて、生徒に考えさせたいことを質問形式でヒントを見せる。手を止めて説明をしっかり聞いてほしい時は、生徒の学習用PC画面をロックする。
AL型授業を始めて感じる変化は、生徒からの発言が出やすくなり、積極的に意見を記述するようになったこと。生徒は自由に話し合うことで自分の考えに自信がつき、自分の考えを発しやすい。
生徒はこれまで、書き直してノートやプリントが汚くなるのを嫌がり、きれいな解答を待っている傾向があった。学習用PCは書き直しや付け加えが簡単になり、記述の積極性が増した。複数の生徒が10行近く解答する光景は、一斉授業では見られなかった。