大王製紙の内紛に終止符、北越紀州製紙が仲介する理由

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その後、北越は日本製紙と資本関係を解消する一方、大王とはいまだに2~3%の株式持ち合いを続けるなど良好関係が継続している。大王と北越は「これまでに経営へ口出ししていない」(関係者)ということでまさに安定株主だった。

北越が創業家からの申し出に応諾した理由として大きいのが、06年の“恩返し”だ。今回、北越は併せて大王グループ会社の株式も創業家から取得したうえで、大王に売却する方針とみられる。グループ会社の買い取り額は不明だが、創業家は多額のキャッシュを工面できる。大王の現経営陣にとっても、創業家との「仲介役」を北越に買って出てもらうことで、分裂していた大王グループの経営を現経営陣に再び一本化でき、株価低迷など企業価値の低下を食い止められる。

一方、北越の動きが今後の製紙業界再編につながるかは不透明だ。

北越は印刷用紙と白板紙が主力であり、大王が強い家庭紙はほとんど扱っていない。主力工場は北越が新潟県、大王が愛媛県と地理的にも分かれており補完関係はある。確かに、大王と北越の3位連合ができ上がれば、王子と日本製紙の2強を追う最右翼ともなる。

ただ、もともと業界再編ありきで資本提携をしたわけではなく、両社が今後どういう判断を下すかは未知数だ。関係者によると、「北越が今後も大王製紙本体の株式を保有し続けるかは条件次第」という。大王が自己株買いするという案もないわけではない。はたして両社は今後どういう青写真を描くのか。

大王製紙の業績予想、会社概要はこちら

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北越紀州製紙の業績予想、会社概要はこちら

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(石井洋平 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済2012年6月30日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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