東急グループが「空港運営」に情熱を注ぐ理由 だから彼らが仙台空港の運営権を勝ち取った

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三菱商事・楽天陣営では、三菱商事が国産ジェット機「MRJ」を開発した三菱航空機の第2位株主。同機を活用したビジネスに意欲を燃やしている。楽天も、マレーシアのLCC(格安航空会社)、エアアジアの日本法人に出資する。何より楽天は、仙台を本拠地とするプロ野球チーム「東北楽天ゴールデンイーグルス」を抱えており、地元とのつながりが深いという強みもあった。

地元という点では、仙台放送が参画した三菱地所・ANA陣営も負けていなかった。航空事業者であるANAや、羽田空港旅客ターミナルビルを運営する日本空港ビルディングも、構成員に名を連ねていることに安心感もあった。

イオン・熊谷組陣営は、イオンモールの商業施設開発のノウハウを空港ビジネスにも生かしたい構え。仙台空港と仙台駅を結ぶ第三セクター鉄道、仙台空港アクセス線沿いでもショッピングモールを運営している。熊谷組は仙台空港の新旅客ターミナルを建設した。東日本大震災で被災した施設を迅速に復旧したことで話題になった。

これに対して東急陣営は、東急コミュニティーが北九州空港ターミナルビルの管理業務を受託しているほか、東急エージェンシーは成田国際空港、新千歳空港、中部国際空港などで空港広告を多数手掛けてきた。また、前田建設は羽田D滑走路や香港国際空港などを携わっており、豊田通商はラオスで空港国際線ターミナル運営の実績があった。

第一次審査は東急陣営がトップ

事業者選定のポイントは、全体の事業方針や将来方針だった。特に、空港をどのように活性化するか、どのように収益を確保するかといったことが重視された。

第一次審査の結果は、東急陣営がトップ。以下、イオン・熊谷組陣営、三菱地所・ANA陣営、三菱商事・楽天陣営の順だった。

1位の東急陣営は、どの項目もおしなべて平均以上の評価を獲得した。一方、4位の三菱商事・楽天陣営は、地域との連携に関する提案事業方針で高い評価を得たものの、旅客者増加策や着陸料設定などの空港活性化方針、安全・保安に関する方針、職員の取り扱い方針といった項目で評価が伸び悩んだ。

国交省は4陣営すべてが第一次審査を合格したと発表したが、三菱商事・楽天陣営は第二次審査に応募しなかった。

残る3陣営で争われた第二次審査は、各案の具体性や実現可能性を中心に審査が行われた。東急陣営は、国際線を中心に利用者を増やし、現在324万人の旅客数を2020年度には410万人、2044年度には550万人に増やしたいという目標を掲げた。

オフシーズンなどの旅客減少期には着陸料を軽減し、航空会社の料金負担を減らすほか、新規就航時にも割引を行うことで航空会社を呼びこむ構えだ。また、約342億円の設備投資を行い、空港ターミナルビルを改修するほか、駐機数や搭乗ゲートも増やす。

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