2016年、ライブ会場は本当に不足するのか 劇場・ホールの閉館ラッシュに現場は悲鳴
ところが、国や都は事態をそれほど深刻視していない。コメントを求めても「日本全体で劇場・ホール数が減っているとの認識はない」(文化庁)、「現状は問題ない」(東京都)と素っ気ない。
実際、2014年に全国で開かれたコンサートの公演数は前年比25.5%増の2万7581本、入場者数は同9.7%増の4261万人と、ここ数年は右肩上がりだ(コンサートプロモーターズ協会調べ)。また、全国公立文化施設協会がまとめた「劇場、音楽堂等の活動状況に関する調査研究報告書」によると、直近の公立ホールの稼働率は52.2%にとどまっている。
つまり、会場数の減少が年々深刻になっているのであれば、ここまで市場が拡大するはずはなく、逆に公立ホールの稼働率はもっと高まっているはず、というのが国や都の論拠のようだ。ただし、民間運営も含めた劇場・ホールに関する網羅的な統計は整備されておらず、誰も正確な実態をつかみきれていない。
今回、問題提起に踏み切った各種芸能団体が本当に訴えたかったのは、むしろ、こうした現状認識さえ満足にできない、業界を取り巻く環境の改善なのかもしれない。
問題が深刻化するのは2016年ではない
劇場・ホールの建設が活況だった1970~1980年代に建てられた施設は、その大半が改修時期を迎えている。が、折からの建築費高騰の影響もあり、改修に要する費用は少額では済まない。
民間運営の場合、劇場・ホール単体で黒字を出している施設は少ない。たとえば三越日本橋本店内にある三越劇場のように、百貨店の集客装置としてメリットがあれば、改修のために費用を投じる理由もある。だがそうでなければ、大規模改修が必要になった段階で閉鎖せざるをえないというのが、多くの施設が抱える実情なのだ。
「改修時期を迎えて、閉鎖しようと考える劇場・ホールの運営者が今後、続出する可能性がある」と、芸団協の福島氏は警戒する。「2016」という数字に注目してしまいがちだが、真に問題が深刻化するのは来年ではなく、さらに5年、10年先なのかもしれない。
(「週刊東洋経済」2015年12月5日号<11月30日発売>「核心リポート01」を転載)
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