どうする受動喫煙対策 職場と公共施設以外でも甘えを排し厳しい規制を

まだある喫煙者側の甘え

ベランダ喫煙に関しては、煙害のみならず、火災のリスクも大きい。特に集合住宅の火災の原因の中で、近年大きく増えているのがベランダ喫煙によるもの。10年に東京消防庁が特に注意を呼びかけたほどだ。その後も、絶えず都内各消防署による注意喚起が行われている。

分譲マンションなどでは自治会に申請する、賃貸なら管理人や大家に訴えるなどの手段はあるものの、自治会長や大家自身が喫煙者なら、対応が形式的なものに終わり、実際には何の効果も得られない可能性は高い。大手のマンション管理会社の中には、被害の訴えがあったときのために、共用部分へ煙の流出を起こさないように促す掲示文の雛形など準備しているところもあるが、現状では特殊な例といっていいレベルだ。多くの管理会社は「自治会から訴えがあれば、その都度対応を考える」程度にとどまっており、積極的な被害防止にまでは至っていない。

喫煙者に対する禁煙指導は、元を断つ意味で重要な戦略だ。勤め人にとっては、一日の大半を過ごす職場や公共施設の完全禁煙、分煙も望ましいことではある。だが、生活の基盤である家庭周辺のたばこ煙対策は、大きく後れを取っている。体調不良などで休養したくとも、家庭の環境が職場より劣悪なら、安心して休養することができない。従業員の健康管理に問題が生じれば、企業社会にとっても損失となる。

たとえば、ピアノなど音の大きな楽器を演奏する家庭では、吸音材・防音材の設置や、窓の二重化など、余裕がある家庭なら数十万円から数百万円をかけて防音工事を行い、近隣に迷惑をかけないように気を配るのが当然とされている。一方、喫煙に関しては、社会の目が甘いこともあり、「自分一人くらい大目に見てもらえるはず」「大目に見るべきだ」という甘えが喫煙者側にある。

JTが主張するように、たばこは嗜好品であり、喫煙は本人の選択である。これを外部から強制してやめさせることはできない。だが、非喫煙者にとって、ことに心臓疾患や呼吸器系疾患を持つ者にとって、たばこ煙は暴力そのものだ。喫煙者自身の家庭だけでなく、近隣住民の健康を損なわないよう、たばこ煙排気からの有害物質除去、あるいはたばこ煙そのものの排出規制など、厳しい義務を課すべきである。

(シニアライター:小長洋子 =週刊東洋経済2012年6月23日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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