どうする受動喫煙対策 職場と公共施設以外でも甘えを排し厳しい規制を
進まない住居エリアの対策
だが、それでも公共施設や職場の環境はまだましだ。住宅エリアでのたばこ煙害については、いまだに何の対策も取られていない。WHOの枠組み条約第八条「たばこの煙にさらされることからの保護」は公共施設と職場環境を対象とし、住宅周辺での受動喫煙に関しては、無視されているレベルといっていい。
家庭、といっても喫煙者のいる家庭内だけが問題なのではない。住宅密集地に軒を接して建てられている戸建て住宅や集合住宅などは、被害防止対策が未整備どころか、いまだに“無法地帯”だ。一時期、JT(日本たばこ産業)が気配りある喫煙として推奨していたために、いまだに玄関先の共用廊下やベランダでの喫煙が絶えない。その煙が流れる先は、自分の家ではなく近隣の住戸だ。そんな所で喫煙されれば、煙は否応なく入り込んでくる。窓を閉めエアコンを稼働させても、最近の建物は24時間強制換気システムになっているからだ。それでなくても節電が声高に叫ばれている中で、窓を閉め切ってエアコンをかけること自体がはばかられるご時世でもある。
換気扇の下での喫煙も、気配りのある喫煙と信じられているようだ。しかし、有害物質を除去しないままの煙を屋外に流出させているという点で、ベランダ喫煙と同じく近隣住民に健康被害を与えているという状況に変わりはない。
だが、こと住宅の場合、被害があっても表ざたにすることはなかなか困難だ。近所付き合いに支障が生じることを恐れ、せいぜい窓を閉める程度が関の山。仮に心臓疾患など持病について説明し丁寧に頼んだとしても、まともに対応してもらえるとは限らない。かえって被害者宅に向かって煙を吹きかけたり、ベランダの仕切り越しに火のついたままの吸い殻を投げ込むなど、犯罪すれすれの嫌がらせを受けることも少なくない。喫煙者のモラルに帰することはたやすいが、受動喫煙による被害の認知度が低いことにも起因する。さらに、被害者を救済するための法的な裏付けもない。被害者は泣き寝入りするほかないのだ。