「ゾス!」の会社と起業ブームに共通する短期志向の陥穽、経営学者は「ザ・ノンフィクション」炎上回をどう見たのか【後編】

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タイパで人生を効率化しようとする若者に伝えたいことがある。人生で最も重要な経験のほとんどは、効率がよくない。恋愛も、友情を育てることも、本を読んで世界観を築くことも、極めて効率が悪い。

日本人が得意としてきたおもてなしや遠慮も、すぐには生産性向上にはつながらない。それでも人間がそれらに価値を見いだしてきたのは、人間らしさの本質がそうした非効率な部分に宿るからだ。

短期志向の延長線上にあるのが、今後の技術環境の変化である。視野を広げてみれば、「現場での気合い」「声の大きさ」「熱気」「場の空気」を重んじる組織文化は、近い将来、根底から問い直される。

その石はダイヤの原石か、砂利石か

いま世界的に注目されているのが、AIエージェントとサイバネティック・アバター(CA)という技術だ。日本政府が50年を見据えた研究開発プロジェクト「ムーンショット目標」でも、こうした技術の活用が中心に据えられており、人が身体・場所・脳の処理能力の壁を超えて活動できる社会を目指して開発が進んでいる。

AIエージェントとは人間に代わって自律的に判断し行動するソフトウェアであり、CAは身体の制約を超えて遠隔地から作業することを可能にする技術を指す。これらの技術は、すでに顧客対応や、テレアポなどの仕事を代替し始めている。番組の若者たちが必死に身につけようとしているスキルは、これらの新技術に置き換わる筆頭候補なのだ。

「石の上にも三年」という言葉が今も通用するとすれば、新社会人は、その石が磨けば光る「ダイヤモンド」なのか、時間の無駄でしかない「砂利石」なのかを見極める力が問われる。それは、短期的な損得ではなく、長期的な視点にほかならない。

26年4月1日、伊藤忠商事の入社式において、岡藤正広会長は「今は3年ほどで辞める人が多いが、どんな部署、どんな仕事でも、小さな目標を定めて積み上げてほしい。小さな仕事も絶対に無駄にならない」とエールを送った。この公の場での励ましを裏打ちするように、岡藤氏は折に触れて「やはり辛抱が必要だ。どんな仕事も、10年は続けなければ何も学べない」と、継続の重要性を説いている。

こうした姿勢は、決して今の時代に逆行するものではない。「古きをたずねて新しきを知る」温故知新の精神が、今まさに求められている。

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