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「中国に特化してた店はしんどいと思う」…《インバウンド9割》変化続ける黒門市場で老舗マグロ店が生き残る訳

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丸山さんは忙しい年末などに、つい雑になった自分を省みることがあるそうだ。クレームがあったわけではない。ただ、「ああ、これはせんかった方が良かったかな」と自分で気づく。その気づきこそが成長につながると信じている。だから次男にも、何も言わない。

丸山さんはマグロを我が子のように丁寧に扱っていた(写真:筆者撮影)

子々孫々まで、おいしいマグロを

魚丸のホームページには、「子どもたちに、孫たちに、おいしいまぐろを届けたい」という理念が掲げられている。先代から受け継ぐ言葉ではない。丸山さん自身の想いだ。

「養殖ものが氾濫する世の中でも、本当においしいマグロを届けたい。魚離れが進んでるけど、子供がおいしいって思ったら、その子が大きくなって、また自分の子供に買うてくれる。1代で終わるんじゃなくて、2代3代、子々孫々までつながるマグロ屋でありたいね」

丸山さんはこれからも、マグロという食文化を守っていく。ただし、守ることと変わらないことは違う。

「古きを守り、新しきを知る。変えなあかんところは、改革せなあかん」

百貨店ギフトから通販へ、さらに、インスタグラム広告や会員制度へ。30年かけて積み重ねてきた変化のすべてが、この言葉に集約されている。

現在64歳の丸山さん。引退の予定を聞いてみた。

「死ぬまで体動く限り働いてって、次男に言われてるからね。働いている方がボケないし、人と喋ることが若さを保つ秘訣ちゃいますか。AIでは無理なんでね。残る仕事やと思いますよ」

毎朝3時20分に起き、自分の目で見て、触って、嗅いで、マグロを選ぶ。そして捌く。顔なじみの客に「いつものやつ」を勧める。そのどれもが確かに、AIに代替はきかない。

黒門市場は変わった。だが魚丸の店先には、今日もマグロが並んでいる。

2代目大将だった丸山さんの父、昇さん(左)は取材中、長らく店頭に佇み、市場に行き交う人を眺めていた(写真:筆者撮影)
前編:「お好み焼き3000円」とインバウンド価格が批判される黒門で、《マグロ一筋90年》老舗が貫く「まっとうな商売」の信念

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