エンジン摩擦を減らす「究極の潤滑油」の秘密 オイルの改善が地球環境を救う?
英BPが分子科学を応用し、CO2増加につながるエンジン摩擦を軽減すべく、新たな燃料と潤滑油の開発に取り組んでいる。
潤滑油はエンジンにとって血液のようなもので、金属と金属の接触によって起こる摩擦を軽減するために極めて重要だ。
BP曰く、エンジン摩擦は摩耗による効率性の低下と損傷によって英国経済に毎年何十億ポンドもの損失を与えているだけでなく、CO2排出量増大にもつながっている。
最近のエンジンはオイル性能の改善で、正味平均有効圧力(BMEP)が向上し続けている。「エンジンは全て金属部品で構成されているので、オイルの主な役割は金属部品同士が互いに触れ合わないようにすることだ。だからこうした高圧力環境下ではかなりの強度が求められる。20年前のエンジンが発生する圧力はおそらく10気圧くらいだったが今では20気圧になっており、エンジン圧力は2倍になった」(BP カストロール社のシニア開発テクノロジストであるサイモン・ ガーニー氏)。
分子科学の応用により、BPのチームは摩擦による損傷と燃料の分解によるエンジン内の沈殿物をナノレベルで確認することが可能になった。チームはまた、摩擦による損傷などを抑える可能性のある何十万もの油性化合物を試しているところだ。
「われわれの仕事は、干し草の山で針を探すように困難だが、オイルの性能向上においては大きな違いを生むものだ。そのため高度な分析機器を使って各分子の機能や潤滑油内での役割を理解できるように努めている」と、BPカストロールテクノロジーセンターのグローバル・アナリティカル・エキスパートのトム・リンチ氏は話す。
実効性のある配合が見つかれば、すぐにBPのブレンドショップで追加のテストが行われる。同じものが世界中で作れるように、その後さらに大規模なテストも実施される。
「新たな配合組成 が研究所から送られてきたら、その配合組成を解釈して(それに見合った)調合方法を見つけ出す。ここでの調合方法がその後、世界中で使われる。つまり、研究所で金属部品とエンジンに対する研究が行われた後に、このブレンドショップで実用化に向けた調合が行われるわけだ」と、BPカストロールのブレンド事業チームリーダーであるクリストファー・ロルフェ氏は話す。
BPのチームによると、ハイブリッドエンジンの登場で新たな課題も浮上している。が、エンジンの効率性向上およびCO2削減効果はこれまでにないほど高いとも見る。そのカギを握るのはやはり、エンジン摩擦をいかに軽減するか、ということなのである。
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