一人っ子政策の「黒歴史」を忘れてはいけない 「権利意識」がガラリと変わった一人っ子世代

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また、一方では労働者全体に占める第1次産業従事者の数が1970年代の80%から2014年には全体の40%を切り、逆に第3次産業従業者が1970年代の約10%あまりから、今では40%を超えるに至っている。つまり、経済を担う労働者の総数が全体的に減っている上に、「生産」に携わる人が激減していることが分かる。

「一つのケーキ」も「一人あたりの資源」も、分け合う人が多いか少ないかの前に、つくり手がいなくなっているのが中国の現状なのだ。

つまり、生産の総数が減り、小さくなっていくパイをもっと多くの人たちが奪い合い、価格だけが高騰する――それは、先に上げた「一人っ子政策」がその目指していた目標と大きく反するものだったという証明でもあった。

人工中絶手術は30年間で推計2.75億件

一人っ子政策は、政府がこれまで持ち上げてきたその華々しい成果の裏に、多くの「黒歴史」がある。

「一胎上環二胎礼、計外懐孕堅決刮」は、「一人を生んだら(女性は)避妊リングを、2人目を身ごもったら(男性が)パイプカット手術を、計画外妊娠は厳しく中絶」という意味だ。このような基本政策が中央政府から各地の政府へ、そして街道委員会などの各住宅を見張る町内会にまで伝えられ、実施されてきた。

『財新網』の報道によると、米ウィスコンシン大学の研究者が中国の衛生統計年鑑をもとに計算したところ、1980年から2009年までのあいだに中国では2.75億件の人工中絶手術が行われたことになるという。また、国勢調査の結果から推算して、この30年間に5.44億人の子供が生まれており、つまり「中国では胎児3人のうち、1人が人工中絶に遭っていた」とする。

さらに、人工中絶に関してこれまでためてきた資料を探していたら、2012年にこんなツイートをメモっていたのを発見した。

「今日、妻が避妊リングを付けるのに付き添ったら、人工中絶の手術を目にした。人生で最も衝撃的な場面で、足がガクガクになった。残忍すぎる。非人道だ。将来もし子供ができたらやっぱり産もう、絶対に人工中絶などしないぞ、と心に決めた」

一人っ子政策が引き起こしたのは、こうした胎児とその家族に対する傷ばかりではない。2011年には『財新網』が発行する雑誌『新世紀』(当時)に衝撃的な記事が掲載された。

湖南省邵陽市下の農村で、計画出産の徹底を担当する計画生育委員会(以下、計生委)が、出稼ぎに出た親の代わりに孫を育てている老人宅から「計画出産に違反した」と孫を強制的に連れ去り、福利院(孤児院)に収容させる例が頻発していたというのである。

次ページ目をつけられれば、一人っ子でも取り上げられた
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