疲弊する消防団、わずかな訓練・装備と報酬で危険な任務--震災が突きつけた、日本の課題《1》/吉田典史・ジャーナリスト

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松尾氏は、「改革により、消防団に与えられていた予算の枠組みはなくなった」と指摘する。

「市長などの考えにより、従来までの消防団の予算を違うところに使うことができるようになっている。つまり、消防団以外のところに、これまでの予算が使われることがある。自治体の自由裁量の余地が大きくなったことを意味するが、消防行政に必ずしも熱心とはいえない自治体もある」

筆者は総務省防災課消防団係を取材し、「補助金制度を廃止し、一般財源化したことが、消防団の予算を減らし、団員に悪影響を与えていることも考えられるのか」と尋ねた。
 
 消防団係は、「その可能性は十分にある」と答える。

「消防行政に限らないが、補助金制度を廃止し、一般財源化すると、それぞれの自治体により、予算をつけて力を入れる分野が違ってくる。消防団の育成に熱心な自治体もあれば、そうではないと思えるような自治体もあることは考えられる」

被災地の消防団の団長、副団長などを取材すると、震災前から、市役所の消防団担当課の課長などが自宅を訪ね、予算についての説明をする機会があったことを聞かされる。

その際、団長や副団長が「団員の装備を充実したい」と申し出ると、課長は即答をすることはなく、その場を離れる。そして、装備を購入するために予算を新たにつけることはほとんどしなかったという。特にここ十数年は自治体の財政難もあり、その傾向が強かったという。

消防団は、被災地では震災前の状態はもちろん、現状を維持することすら難しくなりつつある。松尾氏が宮古市で行った団員へのアンケート調査では、70人弱のうち15%が、「団員として活動を続けることは難しい」と答えている。筆者が取材した石巻市や東松島市の団員も昨年、辞めることをすでに団に伝えている。

しかし、消防団は地域の要であり、防災を考えるうえで重要な存在である。今後、その役割を極力明確にし、地域が一体となり、住民の命を守るようにしていくべきだろう。

松尾氏は、今後は「市民防災」を一層、推し進めることが重要だと説く。

「自治体、消防団、消防本部、警察、自衛隊、町内会、民生委員などの役割を明確にし、いざとなったときに効率よく、確実に住民の命を守ることができるようにしていくべきだ。この市民防災の体制を作るためにも、消防団の装備や服装をはじめ、待遇、訓練の中身などを含め、見直す必要がある」

死亡した団員が死に至った経緯、その遺族への十分な補償、再発防止策などを徹底させることが「市民防災」の大前提になる。


現在の消防ポンプ車の仮設車庫、宮古市消防団28分団


名取市の閖上消防団にて 提供:松尾一郎氏(2枚とも)

よしだ・のりふみ
人事・労務分野を中心に取材・執筆を続ける。著書に『あの日、「負け組社員」になった…』(ダイヤモンド社)、『いますぐ、「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)、『震災死 生き証人たちの真実の告白』(ダイヤモンド社)など。

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