今年30周年でも「なぜ飽きない?」 累計IP総収益22兆円、世界最大IP《ポケットモンスター》を支えた、「顔の力」という戦略
このように、1025種類のポケモンは、信頼性と支配性の2軸を無数の方向に展開した「顔の多様性の総カタログ」だ。どの消費者も、自分の脳が自然に反応する「顔の型」をどこかに見つけられる。これが世代・性別・国籍を超えて30年間愛され続ける構造的な理由だ。
“値引きしない”戦略を支える「顔の力」
ポケモンのビジネス戦略で特筆すべきは、30年間にわたって「安売りをしなかった」ことだ。ポケモンカードは定価を維持し、コラボ商品のライセンス管理もきわめて厳格だ。なぜこれが可能なのか。
筆者が資生堂での商品開発経験をもとに構築した「イメージ・モチーフ理論」で説明できる。これは、商品コンセプトを外見のデザインで象徴的に表現し、商品名・配色・機能まで一貫させることで消費者の記憶への定着を深める手法だ。
筆者が同社在籍時に企画した「Ag+(エージープラス)」がその代表例である。銀イオン(Ag+)による殺菌消臭という機能を、銀色ボトル・商品名・配合成分のすべてと徹底的に一致させた。
テレビCMがゼロだったにもかかわらず口コミだけで大ヒットし、各店のデオドラント棚でNo.1を獲得した。「見た目が正直に機能を語っていた」からこそ、消費者は高い信頼を寄せ、値引きを求めなかったのだ。
ポケモンも、まったく同じ原理で動いている。ピカチュウという「顔」は、30年間デザインの本質を変えていない。色、フォルム、目の大きさ——この一貫性が、消費者の脳への「信頼の蓄積」を途切れさせない。
ブランドがリブランディングと称して顔を変えると消費者が遠ざかるのは、この蓄積がリセットされるためだ。
「ポケモンの顔は資産である」と言いかえてもいい。30年間かけて世界中の消費者の脳に刻まれた信頼の貯金が、値引きなしで売り続ける力の源泉なのだ。
コラボ企業がポケモンとのコラボを求めて高いライセンス料を払うのも、ポケモンの「顔の信頼性」を自社商品に転写したいからに他ならない。これはまさに、顔による「ゼロ・プロモーション・マーケティング」の究極形だ。




















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