人民元の変動を認めるメリットは依然大きい--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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中国の経常黒字が減少した四つの理由

中国の経常黒字の劇的な減少は主に四つの要因を反映している。

第一に原材料の輸入コストが急上昇したことだ。しかも中国の輸出に対する海外の需要はかなり影響を受けやすく、コスト増を安易に転嫁することはできない。

第二の要因は、先進諸国の経済が低成長にとどまっていることだ。これは金融危機の副産物であり、この危機は当面続くだろう。

第三は、中国の貿易加重実質為替相場(インフレ格差で調整した為替相場)がここ2~3年で実際かなり上昇していることだ。IMFの推定によれば、08年以来14%上昇している。これまで中国のインフレは貿易相手国の平均水準よりも高く、実際、人民元は名目ベースで徐々に上昇してきた。

最後に、中国は金融危機への対応として大規模投資による景気刺激を行った。中国の投資は、下落傾向が続く消費よりも輸入に大きく集中している。ハイテク設備に対する中国の投資意欲は飽くことを知らず、ドイツやスイスなどの国々が大いに恩恵を受けた。

これらの要因すべてを考慮に入れない場合でも、中国の経常黒字が世界的な金融危機後に急減したことに驚くべきではない。先進諸国の経済が深刻な落ち込みに見舞われる一方、中国は目覚ましい成長を続けたので、中国の輸出は輸入との比較で下方へ向かうしかなかった。実際、振り返ってみると、驚くべきことはむしろ、中国の貿易黒字がもっと減少しなかったことだ。

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