投資家を黙らせた高市首相が挑む政策に世界が注目、啓発的な経済ナショナリズムの新たな実験の場所に

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国家という次元

過当競争に警戒感を抱くのは日本だけではない。軍事同盟の分断が進むなか、多くの国がナショナリズムへの傾斜を強める方向に追い込まれている。防衛やエネルギー分野にとどまらず、半導体など新たに台頭する重要産業においても、ナショナルチャンピオンの戦略的な重要性は大きく高まっている。日本には国家ブランドを背負う明確な企業は存在しない(高度経済成長期にはトヨタ自動車やソニーがその役割を果たしていた)。一方、米国ではマグニフィセント・セブンが現代経済の覇権を共同で握っている。

その結果、米国は世界の資本市場を支配し、経済全体も力強さを保つ。だが、日本の有権者なら容認できない水準まで格差が深刻化した。米国の大企業が生み出す利益や自己資本利益率(ROE)は、日本企業を大きく上回る。ハーバード大グロース・ラボのリカルド・ハウスマン教授は、こうした構造が米国のイノベーションを拡張可能にしていると指摘する。厚みと流動性のある資本市場から、さらなる技術革新に向けた資金を調達できるためだ。同氏によると、生産額で見れば米国最大の製造業企業は依然としてキャタピラーだ。しかし、マグニフィセント・セブンははるかに高いバリュエーションを誇り、米国の資本市場を活用することで内部留保のみに頼っていたら不可能な水準まで拡大してきた。

他国も同様の道を模索している。中国の「反内巻キャンペーン」は非効率な過当競争を排除することを目的としている。伝統的に加盟国が自国の旗艦企業を育成してきた欧州連合(EU)も、欧州大陸を代表するチャンピオン企業を生み出すことを目指している。これを実現させる上で、防衛需要の高まりは欧州と日本の双方において、決定的な要因となるかもしれない。

防衛

米国の同盟国がもはや米国の支援に全面的には依存できないと判断する中、世界では再軍備が進行しており、業界再編を促す動きにもつながっている。

かつてゴールドマン・サックスに勤務し、その後欧州中央銀行(ECB)総裁やイタリアの首相を歴任したマリオ・ドラギ氏は、政府による勝者選別を伝統的に嫌う立場の出身だ。だが、EUの競争力回復に向けた2024年の報告書で、同氏は防衛と企業数の絞り込みを直接結び付けた。さらに、米国が防衛企業に統合を迫った手法を重要な優位性として位置づけた。

米国は冷戦後、(国防総省の指示の下で)防衛産業の再編を実施した。米国の防衛市場は分断された大規模な産業基盤を支えられないとの判断に基づくものだった。1990年以降、米国の防衛産業基盤は51社から主要5社へと縮小した。

ここにきて日本とドイツはいずれも、再軍備を行わないとした戦後の取り決めから離れつつある。国内で必要とする兵器を生産する大規模な請負企業がなければ、新規の軍装備調達で米国のナショナルチャンピオンに依存せざるを得ないリスクがある。

ドイツはこれを成功させる強い動機を持つが、中国という巨大な隣国と向き合う日本ほどではない。EUが自らの運命を自らの手で握ろうとするなかで、官僚機構や制度的な制約への対応、加盟国間の利害対立といった、従来からの課題が立ちはだかる。

長年にわたり同様の停滞に苦しんできた日本は、一転して異なる局面を迎えた。高市氏はこれを実現する上で、他に例を見ないほど有利な立場にある。他国はその成否から学ぶことになるだろう。だからこそ、世界の投資家は黙って、高市氏に資金を投じているのだ。

(ジョン・オーサーズ氏は市場担当のシニアエディターで、ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。ブルームバーグ移籍前は英紙フィナンシャル・タイムズのチーフ市場コメンテーターを務めていました。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)  

著者:John Authers

ブルームバーグ
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