1錠で即死する「偽装された鎮痛剤」が蔓延するアメリカの緊急事態——24歳息子を奪われた母が告発する、巧妙すぎる"殺人薬"の罠

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
ニックさんのコミュニティカレッジの卒業式で(写真:アンジェラ・パーカーソンさん提供)

ハイキングとスケートボードをこよなく愛するケンタッキー州在住の24歳の青年、ニック・ラッカーさんは、2021年の4月22日夜、地元のピザ店での勤務を終え、父親と電話でおしゃべりをしてから、100ドル分の株をネットで買った後、Xboxでビデオゲームを楽しんだ。

寝る前に、職場の同僚から渡された「パーコセット鎮痛剤」の錠剤を半分に切り、半分だけを服用し、残りを枕元に残してベッドに入った。

翌朝、同居中の祖母が彼の部屋を見に行くと、彼はXboxのゲーム機を手にしたまま冷たくなっていた。

ドラッグ依存症ではなく、健康体そのものだった

「ニックが死んでる」ーーそう知らされた母親で51歳のアンジェラ・パーカーソンさんは茫然とした。「死んでるはずがない。きっとコロナに罹患して意識がないだけ」と願いながら、2時間車を飛ばして慌てて駆けつけると、地元警察の検死官から「あなたの息子はフェンタニルのオーバードースで死去した」と伝えられた。よくあるドラッグ依存症者の死として淡々と処理する警察官や検死官の反応に、母親のパーカーソンさんは信じられない思いだった。

「ニックはドラッグ依存症などではなく、健康体そのものだった。現場検証では、錠剤の半分はそのまま部屋に残っていたというのに、フェンタニルのオーバードース死って一体どういうこと?」

検死の結果、ニックさんの体内には飲んだはずのパーコセット鎮痛剤の成分はまったく存在せず、そのかわり、3種類の別々のフェンタニルの成分が見つかった。鉛筆の芯の先よりも遙かに小さいわずか2ミリグラムの量が成人の致死量だ。

ニックさんとパーカーソンさんは隔週ごとにハイキングを楽しむ仲の良い親子だった。若く体力旺盛で、肌つやも良かったニックさんの身体にはドラッグ依存症の形跡はない。

ニックさんの死因は「フェンタニル・ポイズニング」による突然死で今、この現象が全米の多くの10代や20代の若者を襲い命を奪っている。

次ページ致死量のフェンタニルが混入
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事