1錠で即死する「偽装された鎮痛剤」が蔓延するアメリカの緊急事態——24歳息子を奪われた母が告発する、巧妙すぎる"殺人薬"の罠
昨年夏にはケンタッキー州政府を説得し、車のライセンスプレートにニックさんのロゴと「スティグマが殺人につながり、沈黙は死につながる」という言葉を印刷して定価44ドルで販売を開始。500枚以上売れればキャンペーンは今後も続行となるそうだ。
そして昨年12月にはトランプ大統領が「違法フェンタニルを大量破壊兵器と認定する」という大統領令を出した。パーカーソンさんは5年前からこの言葉を使って若者たちに警告してきただけに「やっとか」という気持ちも少なからず感じた。
「私は政治的に右でも左でもない」と彼女は強調する。
ニックさんが住んでいたのは「全米で最も美しい小さな街」と評判の高いバーズタウンで人口は1万4000人以下だ。そんなのどかな街でも2021年にニックさんを含め24人がフェンタニルで死亡した。
違法フェンタニル剤を流通させる目的は?
1粒で人間を殺せる違法フェンタニル剤を製造し流通させるカルテルや犯罪者の目的は何なのか? 1回で殺せるのであれば、相手を依存症にさせて長期間ドラッグを買わせ続けて大金を儲けることはできないはずだが?
「犯罪者が従来狙ってきた依存症者ではないまったく新しいフレッシュな顧客、つまり10代前半の子供たちにも流通させることができるからだと思う」とパーカーソンさんは言う。
彼女が州内の中学校を訪れ、違法フェンタニルの知識を生徒たちに伝えた時に「オンラインでドラッグを買ったことがある人は?」と聞くと、生徒の半数が手を挙げたという。
「ショックだった。違法ドラッグ売買と言えば私たちのイメージでは街の薄暗い治安の悪い場所でひそかに取引されているものだった。でも今の10代の子はスナップチャットで売人とやりとりし、オンラインで電子通貨で買う。しかも親が知らないうちに自宅に配達されてくる」
アメリカで2023年の1年間でフェンタニルを主とする違法ドラッグで死亡した人の数は7万3000人で、フェンタニルは18歳から45歳の年齢のアメリカ人の死因の第一位だ。ウェストバージニア州のフェンタニルによる死亡率が全米で最も高く、すぐ隣のケンタッキー州はその流通経路に当たる。ルイヴィルやレキシントンなどの大都市にほど近いネルソン郡のニックさんが住んでいた小さな街ですらドラッグが行き交うわけだ。
パーカーソンさんはネルソン郡の政府を説得し、街中に、フェンタニルなどのオピオイド系薬の過剰摂取時に鼻孔にスプレーする拮抗薬「ナルカン」の無料販売ボックスの設置にこぎつけた。「この薬がもし緊急時にあれば、私の息子は今でも生きていたはずだから」と彼女は言う。
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