「心臓マッサージ3000円」「オプジーボ50万円」が物語る医療現場の"命の格差"――技術より薬が上。医師が明かす「不要な検査・入院」の裏側

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マクロの視点で議論すれば、日本の医療に無駄は少ない。これは医師や看護師の過酷な勤務が恒常化し、外来診療や心臓マッサージの値段を抑制しているためだ。この仕組みは持続不可能だ。これ以上、コストを削減すれば、医療システム自体が不安定化する。

医療システムを安定化させるためには、還流する資金を増やさねばならない。では、どれくらいが必要か。ドイツ並みの医療費率を確保するには、約10兆円ぐらい必要だ。

今回の診療報酬改定で、診療報酬本体は3.09%引き上げられた。「30年ぶりの大幅な引き上げとなる。厚生労働省の求めた数字を高市早苗首相がそのまま採用した」(日本経済新聞12月24日)など、批判的な論調が目立つが、これは的を射た見解ではない。

この程度の引き上げで増加が期待される医療財源は1.5兆円程度にすぎないからだ。まったく足りず、問題の解決にはならない。

財源を積むためにすぐに思いつくのは、保険料率の値上げだ。ただ、それは難しい。わが国の国民皆保険制度は、現役世代が支払う保険料や税で、高齢者の医療費を賄う賦課方式で運営されているからだ。

負担増なく医療費を増やす

現役世代の負担を増やさず、医療システムに循環する資金を増やすにはどうすればいいのか。

身も蓋もない言い方だが、金がある人・組織が負担するしかない。富裕な国民、利益を上げている企業、黒字の自治体が応分の負担をするしかないだろう。

筆者が注目するのは、製薬企業だ。医療で利益を上げているのだから、その利益の一部を医療還元するのは筋が通っている。

また表に示したように、日本のGDPに占める医療費の割合は、先進国の中ではアメリカに次いで高い。医療費を合理化するなら、まずここに手を加えるべきだが、日本経済新聞は、このような事実を報じない。

さらに国内製薬企業は近年、医療機関の経営難を傍目に巨額の利益を上げている。2024年度の国内主要製薬企業10社の営業利益は、約1.9兆円に達する。

これは国内製薬企業の開発力が高かったからではなく、円安による薬価差益だ。例えば、武田薬品が公開している財務諸表によると、同社は為替影響により売上高で1961億円、営業利益で559億円の押し上げ効果を得ている。中外製薬の為替差益は、営業利益で764億円だ。

利益は投資家に還元される。利益のうちどの程度を株主に還元したかを示す配当性向は、武田薬品工業が287%、アステラス製薬が261%という「異常」な値を記録している。

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