反中マルコス大統領が議長、ASEAN「4つの課題」/2026年のASEANが「黒歴史」を持つセブで開幕へ

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マルコス氏は2025年8月のインド訪問時の記者会見で、台湾有事に言及し、米中が衝突した場合、地理的な近さなどから「いやおうなく巻き込まれる」と発言し、中国外務省が「火遊びをしている」と激しく反発した。「台湾有事が日本にとって存立危機事態になりうる」と述べた高市早苗首相発言と通底する発言だ。

マルコス氏は前任のドゥテルテ氏の親中路線を転換し、アメリカとの間で2014年に締結した防衛協力強化協定(EDCA)に基づき、アメリカ軍が使用できる国内の基地をそれまでの5カ所から9カ所に増やした。うち3カ所は台湾に近いルソン島北部などに集中させた。

一方で昨年10月28日の記者会見では、次期議長として中国の習近平国家主席を「間違いなく招待する。まったく悪いことではない」と述べ、「比中関係は領土紛争だけではない。関係を再定義する方法を模索している」と説明した。

中国にとって目の上のたんこぶのような存在のマルコス氏の招待を受けた習近平氏は、それに応じる度量をみせるだろうか。

<課題4>試されるASEANの求心力

ASEANは2025年、東ティモールの加盟を認め、11カ国体制となった。東南アジアの地域機構としては完成したといえる。しかし近年、求心力より遠心力が強く働いているようにみえる。

ASEANで最大の人口とGDP(国内総生産)を抱えるインドネシアは2025年1月、有力新興国でつくるBRICSに正式に加盟した。その3カ月前の2024年10月にはマレーシア、タイ、ベトナムがBRICSのパートナー国となっている。

2025年9月に中国・天津で催された上海協力機構(SCO)の首脳会議には、マレーシアのアンワル首相やベトナムのファム・ミン・チン首相が出席、インドネシアも外相を送った。ラオスは対話パートナーとなることが決まった。

BRICSやSCOにはグローバルサウスと呼ばれる新興国や途上国が集う。いずれも中心にいるのは中国とロシアだ。ASEAN加盟国がここにきて両機構への参加を表明したり、検討したりする背景にはアメリカの変容がある。

ASEANはインドシナ紛争最中の1967年に反共の砦として5カ国で創設されたが、冷戦後、かつて敵国だったベトナムやラオス、カンボジアを取り込んで拡大した。中国をにらむアメリカもそれなりの関与を続けてきたが、トランプ政権にはこの地域への関心がうかがえない。

トランプ氏は2017年、第1次政権最初のASEAN会議でフィリピンを訪れ、アメリカ・ASEAN首脳会議に出席したものの、東アジアサミットに参加することなく帰国した。

その後の3年間は欠席を続けただけではなく、国務長官さえ出席させずASEANを落胆させた。

第2次政権となった昨年10月の会議ではクアラルンプールを訪れ、アメリカ・ASEAN首脳会議にこそ参加したものの、東アジアサミットはやはり欠席した。会議への参加より、タイ・カンボジアの停戦協定署名に立ち会い、調停者としての姿を見せることに主眼がおかれていた。

何より同盟国であるフィリピンをはじめ、タイやインドネシアなどの友好国にも相互関税を課し、国際開発庁(USAID)による難民援助や民主主義支援といったこれまでの関与を打ち捨てた。もはやアメリカを地域の主要なプレイヤーとして頼りにすることができないとの見切りが、ASEAN加盟国のBRICS、SCOへの接近につながっている。

ミャンマー情勢やタイ・カンボジア紛争など身内の問題に対する無力さも求心力の低下につながっている。

ASEANの価値や評価を著しく阻害してきたミャンマー国軍による総選挙結果を認知すれば、欧米諸国だけではなく域内外の民主勢力から大きな失望を買うだろう。議長が判断を先送りすれば、域内の事態に対応できない組織として評価はさらに下がる恐れがある。

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