増資インサイダー問題、野村にいらだつ金融庁 機能しなかった「壁」
UFJ銀の二の舞い?
今後問われるのは、野村の問題解決への姿勢だ。
監視委は3月のインサイダー問題にかかわる金融庁への勧告後、野村への特別検査を実施しており、現在も継続中だ。それに対し、野村は「検査に全面的に協力する」と繰り返すのみ。ある証券会社は「あれが業界トップの証券会社にふさわしい振る舞いなのか」と嘆く。
29日の勧告を受けて、野村は「証券会社の社員から情報を入手したとの当局の認定が示されており、誠に遺憾に存じます」とのコメントを発表した。が、同社によると「誠に遺憾」なのは自社から情報が流れたという意味ではないと言う。今後についても「社外の弁護士による広範な調査と改善策及び人事処分等に関する意見をいただく」としているが、経営と離れた第三者委員会の設置するわけではない。
この対応を受けて、金融庁幹部は「結局、われわれの厳しい評価がわかっていないのか」と怒りを隠さない。あいまいなコメントによって、かえって金融庁の感情を逆なでしただけだ。
金融庁、監視委との溝を埋められない野村証券に対し、金融庁や業界関係者からは「かつてのUFJ銀行と近い感じを受ける」という声が上がる。
03年、多額の不良債権を抱えていながら金融庁の厳しい批判に対して高をくくっていたUFJ銀行は、厳格な金融検査の果てに検査忌避まで追及されて、経営陣が刑事告発される事態に発展。単独で生き残ることもできなかった。その根底にあったのは「経営層の現実を把握する能力の乏しさだった」と、元UFJ銀行の幹部は振り返る。
業績不振もあって野村に対する市場の目も厳しい。事態を打開するためには、外部の評価を高められるような明確な対応を自ら取るか、あるいは「当局」という外部の力によって改善させられるか、だ。どちらが傷が浅くて済む道であるか、論をまつまでもない。
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(浪川 攻 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2012年6月9日号)
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