増資インサイダー問題、野村にいらだつ金融庁

機能しなかった「壁」

 

中央三井アセットの件で自ら名乗り出た企業はないが、情報提供したのは主幹事の一社である野村証券とみられる。野村証券を傘下に置く野村ホールディングスは「監視委の検査に全面協力する」とコメントするのみで、今回の件への関与について明らかにしていない。本誌の取材によれば、野村証券の営業部門の2人が旧中央三井アセットのファンドマネジャーに情報を提供した。みずほFGの増資発表後の株価下落を勘案すると、ファンドマネジャーは2020万円の下落損失を回避したことになる。

3月の国際石油開発帝石の件でも情報提供者は野村だった。同社は少なくとも、二度にわたってインサイダー事件で重要な役割を演じたことになる。

株式の引受業務を行う証券会社は、市場の公正性確保の観点から一定の規制を受けている。顧客企業の増資で引受業務を行う部門と、株式販売を行う営業部門との間での増資情報の遮断がその一つ。中国の万里の長城にちなみ、チャイニーズ・ウォールと呼ばれるものだ。一連の件ではこれが機能しなかった。監視委も「壁が崩れていた」と言い切っている。

インサイダー規制では、取引によって利得を得た旧中央三井アセットが罰せられる一方、情報の提供者である野村は直接的な処罰の対象とならない。

だが野村についても、定められた規制であるチャイニーズ・ウォールを順守しなかった罪は決して軽くはない。

証券会社の場合、株式市場の透明性、さらには株価の価格形成の公正性を守るという社会的な使命を担っている。そのことを踏まえれば、機関投資家などの一部得意先へ事前に情報を提供することで利得を上げさせ、価格形成を歪めるという振る舞いはその使命の放棄に近い。金融庁関係者も「新たに情報提供者も含めた規制を設ける必要があるし、それが存在しない中では、情報提供者には業務改善などを強く求める必要がある」と言う。

 

 

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