増資インサイダー問題、野村にいらだつ金融庁 機能しなかった「壁」
「東京市場では公募増資のインサイダー取引が横行しているのではないか」
今年に入り、海外の市場関係者は以前から抱いていた不信感を強くしている。
証券取引等監視委員会は5月29日、公募増資に絡んでインサイダー取引を行ったとして、旧中央三井アセット信託銀行(現三井住友信託銀行)と和製ヘッジファンドのあすかマネジメントに対し、課徴金を科すよう金融庁に勧告した。監視委は3月にも、国際石油開発帝石の増資をめぐって行われたインサイダー取引について、旧中央三井アセットに勧告を行ったばかりだ。
公募増資に絡むインサイダー取引は、発表前に情報を入手し、増資による株式の希薄化懸念から株価が下がることを先取りして売りを行うのが典型的だ。
今回の二つのケースもそのパターンだ。旧中央三井アセットの件では、同社のファンドマネジャーがみずほフィナンシャルグループの増資情報を事前に入手。みずほFGが増資を発表した2010年6月25日の前日に保有していたみずほ株117万8600株を約2億円で売却した。あすかアセットの場合は、日本板硝子が10年8月24日に新株発行を公表する前に株式をカラ売りして利得を上げた。
機能しなかった「壁」
ここで焦点となるのが、増資情報の入手先だ。あすかアセットの件では、主幹事証券のJPモルガンが素早く反応し、同社から漏れた事実を認めた。