小田急や東急並みに混む「新交通」の凄い実力 「日暮里・舎人ライナー」、7年に7回も増発

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ところが、日暮里・舎人ライナー開業により都バス里48系統が廃止されたかといえば、そうではない。日中に、1時間に1〜2本程度の運転に減らされたとはいえ、日暮里駅前~見沼代親水公園駅前間などに、今も走っている。

日暮里・舎人ライナーの開業前から足立区西部の主力公共交通機関だった都バス里48系統。ライナー開業後も走っている

これは日暮里・舎人ライナーの駅間距離に対し、里48系統のバス停間隔の方が短く、高架駅での乗降を好まない高齢者を中心に、バスの需要も残ると判断されたためだ。

二重投資気味と言えなくもないが、補完関係があると解釈しよう。夕刻、日暮里駅前で見ていた限りにおいては、都バスは座席をそこそこ埋める程度の利用はあった。

さらに乗客増えるとどうなる?

また、見沼代親水公園駅は足立区と埼玉県川口市との都県境ぎりぎりの位置にあって、埼玉県側からの利用も多く路線延伸の要望も強い。だが、あくまで東京都の事業であるため、埼玉県に乗り入れるには新たに第三セクター鉄道を設立するなりしなければならない。

東京メトロ南北線の赤羽岩淵駅以北への延伸が、埼玉高速鉄道との相互直通運転という形を取ったのと同様である。

もっと喫緊な課題としては、沿線の急速な都市化があるだろう。

まだ、開業から7~8年ほどしか経過していないため、日暮里・舎人ライナーが走るエリアは以前からの一戸建てを中心とした住宅街のままで、高層住宅はそれほど多くない。工場跡地などもないので、大規模マンションが林立する都市風景になるとも考えにくいが、「陸の孤島」から一転。

交通至便な土地となっただけに、どう転ぶかもわからない。例えば、沿線に多い都営住宅の建て替えが具体化した時、もし高層化イコール住民の増加となればどうなるか。注視していきたいところである。

土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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