仏高速鉄道「TGV」脱線事故はなぜ起きたのか 同時テロの影で発生したもう一つの大惨事
事故原因などの詳細については、事故発生直後ということで、まだ警察や鉄道会社から正式な発表はされていないが、警察当局は「テロとの関わりを示す証拠は見つかっていない」と発表している。
事故当時、大きな爆発音が聞こえたという証言や、また車両火災が発生したという情報もあり、その爆発音が事故の発生前に生じた「事故原因」に起因するものなのか、それとも事故が発生したことで生じたものなのか、引き続き調査が行われているが、11月15日にストラスブール副検事のアレクサンドル・シェブリエ氏は、テロの可能性は低いとの見解を示した。
今回の事故は試運転中の列車で、一般乗客はいなかったものの、車内にはフランス鉄道の技術者や乗務員のほか、招待された関係者の家族などが乗車しており、このうち11人が死亡、37名が負傷(12名重体)している。当初、49名が乗車していたという情報があったが、実際のところ正確な乗員数は分からず、現在確認を急いでいる。
最高速度近くでカーブに突っ込んだ
今回、脱線・転覆した車両は、フランス国内で使用されているもっとも標準的な2階建て車両TGV-Duplex型のうち、Dasyeと呼ばれる改良型である。
これは、2007年以降に製造された新しい車両をベースに、横方向および垂直方向の加速度を監視するセンサーや、信号、架線の状況をチェックする監視モニターなどといった検測装置を搭載した試験専用車両だ。
この日行われていた試験は、営業最高速度時速320kmの認可を得るために、その10%増しの時速352kmで運転するもので、今年9月から同じ車両を使用して、繰り返しテストが続けられていた。このようなテストは特別のことではない。日本でも新路線の開業前走行試験や、新型車の試運転では必ず行われている。現在世界最速となる時速360kmの営業運転を目指すイタリアでは、その10%増しとなる時速400kmの走行試験を開始している。
その後の発表で、事故発生現場は最高速度時速160kmの区間となっており、試運転では同様に10%増しの時速176kmまで引き上げて試運転を行う予定だったが、ほぼ最高速度に近い時速350kmでカーブに差し掛かり、脱線転覆したという説が有力となっている。
前述の通り、事故発生から現在に至るまで、警察当局も鉄道会社側も、この事故がテロを起因とするものであるという証拠は見つかっていないと発表している。また現場上空からの映像で、車両がカーブの外側へ放り出されるように転覆していることからも、スピード超過が事故原因として有力なのは間違いない。
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