「裏切り者がいる組織」はやはり全滅するのか? それでも生物の共生関係が絶えない納得の理由

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現実の空間では、地域個体群は自由に他の領域に行くのは困難で、サブ個体群間の個体の移動は1世代では少数だけにとどまります。つまり、一面に大きな個体群が続いているのではなく、間に行き来が少しだけある小さな個体群が連なっているような構造をしているのです。

こういう構造だと、裏切り者が入った個体群は消滅しますが、その個体が他の個体群に取り込まれるかどうかは確実ではありません。入らなければ、そのまま共生関係は継続します。また、滅びていなくなったところにも、周りから他の個体が侵入するので、新たな共生系が走り始めます。全ての生息場所で裏切り者が同時発生するのはあり得ないので、共生関係は結局滅びないで存続します。

現実世界で「共生関係」が存続している理由

自然選択の考え方からは、共生は存続不可能なものですが、現実の世界ではちゃんと存在し、別に滅びてしまわない。

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このことから、「共生者は、共生を裏切り、システムの利益を搾取することで自分の適応度をさらに上げられるが、構造化された個体群、という現実世界では、裏切り者が広がった個体群は滅びる。やがて、健全な共生系が再び周りから侵入し、それが存続する」という仮説をたてることができます。1つのサブ個体群だけ見ると、時々滅びるがまた復活する、というところです。

これは自然選択説が間違っているのではなくて、個体群が複数のサブ個体群でできているという、構造がない個体群での進化だけが考えられているからです。そういう構造を組み込んだモデルで分析すれば、現実のことがわかります。

もちろん、寄生者が生じる確率が高すぎれば存続できないでしょうが、実際には存続しているのだから、裏切りが生じる確率はそう高くはないでしょう。サブ個体群の数が多いほど、全部に裏切り者が侵入する確率は下がるので、全体が大きく、複雑な個体群ほど共生は存続するのです。

長谷川 英祐 進化生物学者、元北海道大学大学院農学研究院准教授

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はせがわ えいすけ / Eisuke Hasegawa

1961年東京都生まれ。子どものころから学者を夢見る。大学時代から社会性昆虫を研究。卒業後は民間企業に5年間勤務。その後、東京都立大学大学院で生態学を学ぶ。主な研究分野は、社会性の進化や、集団を作る動物の行動など。趣味は、映画、クルマ、釣り、読書、マンガ。著書に、ベストセラーとなった『働かないアリに意義がある』(ヤマケイ文庫)、『面白くて眠れなくなる生物学』(PHP文庫)などがある。

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