「裏切り者がいる組織」はやはり全滅するのか? それでも生物の共生関係が絶えない納得の理由
対して、アリはアブラムシの保護のため、捕食者を追い払うときに危険が生じるなどのコストがあるはずですが、ハタラキアリは自分の生命を犠牲にしてもコロニーが利益を得ればよいので、良い餌を獲得できることで簡単に元が取れるように思います。
ここでは、共生関係は「互いに維持のためのコストを払っているが、両者ともそれを上回る利益を関係から得ているので適応戦略として成立する」ということを覚えておいてください。血縁選択による利他行動などと同様、コストはあるものの、トータルとしての適応度は両者ともに上がるわけで、共生もまたダーウィンの自然選択の枠組みで説明できることになります。
協力しない寄生者はどうなる?
しかし共生でも、関係する両者はいわば「他人」なので、利己的な適応進化のもとではどちらかが裏切り、相手を搾取するだけになる可能性はないのでしょうか?
もちろんそれは起こります。ダーウィンはそんなこと考えなかったでしょうけど、現在の生物学においては、自然選択の理論を扱うとき、資源は無限にあるという暗黙の仮定を置いています。
共生に参加するある種の中に、参加のコストを払わない変異体が出現して、系の利益だけを受け取る。つまり、自分がするべきことをせずに利益だけ受け取る寄生者が出現したとします。コストとは、アブラムシなら甘露の中につくって出すアミノ酸、などです。
この場合、参加のコストを払わない分だけ変異体(寄生者)のほうが元々のものより適応度が高いので、寄生者が増えます。変異体が増えると共生システムがうまく働かなくなりますから、共生系がうまく回らなくなり、共生系は消滅します。これが現在の理論が予測する未来です。しかし現実には、共生系は存在し続けています。何が間違っているのでしょうか?
上の予測では、資源の枯渇はあり得ません。しかし現実の生物の世界はこのようにはなっていません。現実の生息空間は、ずっと一様に続いているのではなく、生息に適した地域とそうではない地域が連なり、その状態で広がっていることが普通です。そんな中で、共生系はなぜ裏切り者の出現で消滅していかないのでしょうか。


















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