横浜なのに「巨大団地群」華やかな港町の裏にある街のリアル 高齢化率約30%、都心まで60分…持続可能な郊外住宅地を目指す「洋光台」の今

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リノベーションなど魅力向上の取り組みが進む一方で、構造的な課題も残されている。それは洋光台の立地だ。

時間距離と地形という2つの構造的制約

洋光台は根岸湾に近く、横浜市内で働く人々が暮らすまちと思われそうだが、実際は異なる。20年の国勢調査によれば、洋光台で暮らす就業者の17.8%(約1800人)が他県で従業しており、その大半は東京23区への通勤だ。洋光台から東京都心部へは電車の乗車時間だけで60分を超える。人口減少が加速する中、この時間距離は新たな住民を呼び込む上で不利に働く。

この課題は洋光台だけのものではない。20年の国勢調査によれば、横浜市全体から東京23区へは毎日39万人弱が通勤(他県通勤者の9割)し、横浜市の昼夜人口比は91.1%と、ベッドタウンという構造的特性を色濃く残している。特に東京都心に対して時間距離が遠い横浜市南部の住宅地は、洋光台と同様の課題を抱えているところも多い。

加えて横浜市では、市の面積の6割以上を占める丘陵地に住宅が広がっている。坂道の多い地形は、住民の高齢化が進めば日常生活の大きな負担となり、まちの人口減少を加速させる要因ともなりうる。時間距離と地形という2つの構造的制約により、かつてのような人口流入は見込みづらい。

洋光台北団地
洋光台北団地では高層住棟の建て替えが行われている(筆者撮影)

洋光台の風景が生まれる経緯で示したように、東京のベッドタウンとして急速に発展した横浜市内の住宅地は、その発展期を終え、新たな段階に入っているといえる。

こうした状況の中、洋光台では「よりよい成熟」や「ゆとりのあるまちづくり」という視点に立ち、「発展」や「成長」とは異なるモデルで持続可能性の向上が模索されている。外観改修やコミュニティ拠点の整備を通じて地域の魅力を維持し、既存ストックを活かしながら地域としての持続性を高める。急激な回復ではなく、安定的な維持を前提とした取り組みだ。

矢部野橋
洋光台駅前の根岸線を越える橋は旧地名をとって「矢部野橋」と名付けられている。矢部野は全域が洋光台となった(筆者撮影)

洋光台がどのような経緯で生まれ、発展したのかを振り返り、現状の課題やポテンシャルを再確認することは、こうした取り組みを進める上で重要だ。また、市内でも早くから計画的に造成されたまちだからこそ、洋光台における模索は、市内他地域のモデルケースとなりうる。

みなとみらいや中華街など華やかなイメージで知られる横浜だが、住まいという面で見れば、丘陵地に広がる住宅都市であり、370万人の大半は洋光台のような郊外住宅地で暮らしている。

その未来は決して華やかではないが、計画的開発と急速な高齢化という道を辿った洋光台の「いま」は、成長を前提としない時代における大都市郊外住宅地の転換期を、明瞭に映し出している。

鳴海 侑 まち探訪家

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なるみ ゆう / Yu Narumi

1990年、神奈川県生まれ。大学卒業後は交通事業者やコンサルタントの勤務等を経て現職。「特徴のないまちはない」をモットーに、全国各地の「まち」を巡る。これまで全国650以上の市町村を訪問済み。「まち」をキーワードに、ライティングをはじめとしたさまざまな活動を行っている。最新の活動についてはホームページ(https://www.naru.me/)やX(旧・Twitter、https://twitter.com/mistp0uffer)で配信中。

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