三菱重工がMRJに全力で挑む"真の意味" 「国産機が飛ぶ」という感動話だけではない

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また、サプライヤーの使う工作機械についても、航空機メーカーから細かな指示を受ける。指定されたものより、優れた工作機械があったとしても、航空機メーカーが認めなければ使うことはできないのだ。

(提供:三菱航空機)

ただし、これらのエピソードで航空機メーカーが専横的だということを言いたいわけではない。航空機が墜落した場合、すべての責任は航空機メーカーにかかってくる。ビジネスとしての旨味も大きい代わりに、巨大なリスクを抱えるのも航空機メーカーなのである。

三菱航空機はMRJのメーカーになることにより、サプライヤーの選定や部材、生産手法を自由にできる。その権利と共に、大きな責任もまた負うのである。

航空機の部品発注は、「レシプロ取引」?

ここまで述べてきたように、航空機メーカーはサプライヤーに比べれば、ビジネス上の自由度は高い。ただし、航空機ビジネスは、その規模の大きさゆえに、政治的、経済的な制約を受けることもある。その代表的な例が「レシプロ取引」だ。

航空機の国際共同開発の歴史は長い。日本の機体メーカー、装備品メーカーはサプライヤーとして、1980年代からボーイングやエアバス向けにさまざまな部品やモジュールを供給してきたが、こうした国際的な分担生産の背景に、生産分担国の航空機需要が深く関係していると言われる。

簡単に言えば、たくさん買ってくれる国のメーカーには部品の注文を出す、あるいはたくさん買ってくれることを期待してその国のメーカーに注文を出す。こういったレシプロエンジン(往復動機関)の中のピストンの行ったり来たりのような、いわば「レシプロ取引」の考え方が底流にあることは否めない。

たとえば、かつてのボーイングと日本のエアラインの関係についてみると、日本のエアラインが2006年7月までに発注したボーイング機は826機、760億ドル(2004年の価格)で、日本は同社にとって世界最大の顧客であった。特に、JALグループは747(ジャンボジェット)の世界最大の顧客で、ANAは767の米国外における最大の顧客だった。

777についても、JALとANAを合わせると米国外における最大の顧客になる。確かに日本におけるボーイングのパートナーやサプライヤーが多い理由は、必ずしも技術力だけではないのかもしれない。

それが露骨に見られるのが、アビオニクス(航法システム)に関する航空機メーカー2強の関係だ。国際的なアビオニクス市場は、米国のロックウェル・コリンズと、フランスのタレス・アビオニクスの2社の寡占状態にある。ところが、ボーイングが採用しているアビオニクスは欧州のタレス・アビオニクス製、一方のエアバスは米国のロックウェル・コリンズ製と、たすき掛けの関係になるケースも少なくない。

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