塩田潮
「モーニング娘」と「天童よしみ」か向かい合う。今週、野田首相と小沢元代表の会談が行われる。2003年の小沢自由党の民主党合流を、野田首相は後に著書『民主の敵』で「モーニング娘に天童よしみが入ってきた」「何とも言い難い違和感」と振り返っている。
存在感の違いを強調しているが、「違和感」の根っこにあったのは、政治風土と政党文化に対する感覚のずれだったのではないか。両者の会談は消費税増税が最大のテーマだが、結局のところ、その問題も含め、今後、同じ党の同志として風土と文化を共有できるのか、あるいは風土や文化の違いを超えて共存できるのか、その見極めがポイントだろう。
野田首相は「誠心誠意、訴えれば理解してもらえる」という姿勢で、「秘策はない」と語る。一方の小沢氏は「政権交代の大義」を言い続ける原理主義だ。自民党の谷垣総裁は「小沢氏との決別を」と分裂誘発作戦で挑発している。
ここまで野田首相は小沢氏と自民党の両にらみの二股膏薬路線だったが、会談は決裂に終わり、二者択一の選択を迫られて、政界大激動の引き金を引くという分析も多い。他方、会談がセットされた時点から、輿石幹事長の仲立ちで手打ちの筋書きができているのでは、と裏読みする人もいる。
どっちに転ぶか。両者の理念、路線、主義、主張がぶつかり合うが、当然、政治力学や権力争奪の読み、利害得失の計算も働くはずだ。
それだけでなく、二人の気心や性分、肌合いなど、人間の好き嫌いの部分が大きく影響しそうだ。小沢代表だった野党時代、野田氏は「民主党に欠けているのはリーダーシップよりもフォロワーシップ」と語り、代表を支えるべきだと説いた。08年に代表選で小沢氏に挑戦する構えを見せたこともあったが、以後は非小沢陣営に身を置きながらも慎重に小沢批判を控えてきた。だが、野田政権発足後、距離は広がる一方だ。
ここで「モーニング娘」と「天童よしみ」が同じリズムでハーモニーを奏でるのか、それとも背を向け合い、左右に別れて舞台の花道を歩むのか、二人に「通じ合う気持ちと言葉」の持ち合わせがあるかどうかが決め手となりそうだ。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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