「国宝」がアカデミー賞の舞台へ、アニメに加えて実写でも成果を出すソニーグループ、「日本国内だけで終わるものではないものを作りたい」
普遍性が国境越える
「どの国のお客さんにも喜んでもらえる作品だ」。ミリアゴンスタジオ執行役員で、国宝で企画・プロデュースを担った村田氏はこう強調する。同作は日本の伝統芸能である歌舞伎が題材だが、血統主義を乗り越え、芸を究めた人間が孤独になっていく様は、異なる言語・文化圏にも通じる。普遍的な物語は世界でも受け入れられるとみる。
村田氏がお手本の一つとするのがインド映画だ。言語が分からなくても歌や踊りの魅力が伝わってくると言い、よく見ているという。制作費100億円弱で22年公開の映画「RRR」は欧米でも大ヒットし、日本でも興行収入が25億円を超えた。
国宝では、歌舞伎の演目を可能な限りノーカットで見せることにこだわった。芸術性と商業的成功を両立できる作品を追求した結果、複数想定したシナリオの中で「ベストケースをちょっと斜め上にいっている」反響があったと同氏は話す。
世界目指す動き
映像産業振興機構(VIPO)の槙田寿文事務局次長は、邦画はかつて黒澤明監督に代表されるような「しっかりとした歴史」があり、その後も大島渚監督、是枝裕和監督らが続いたが、主要市場は依然として日本国内だった時代が長かったと説明する。
だが、ここ3、4年で潮目が変わったという。「特に若いプロデューサーや監督が最初から世界を目指す」動きが加速し、国際共同製作を通して作品を公開する市場や資金調達額を増やすことで、より充実した作品づくりを行うことが可能となった。
俳優のストライキや山火事があったハリウッドの映画産業が勢いを失う一方で、韓国映画「パラサイト」が世界で高い評価を受けるなどアジア発の作品が評価される追い風もある。槙田氏は、邦画で「近年の傑作の1本」だと感じた国宝にも期待を寄せる。


















