距離が伸びても縮んでも…箱根駅伝5区が「最重要区間」であり続ける理由。《「山の神」も誕生》山が生む「劇的で残酷なドラマ」
「5区をしっかりと計算できるチームは、レース当日を含め調整の段階からゆとりをもてるんです。それはすごく大きなアドバンテージになります。
レースが近づくと期待と不安、緊張感などがチームを取り巻きます。それが過度なストレスとなり、本番前に体調を崩したり、痛みが生じたりする選手が出てきます。
でも、山のスペシャリストがいると、レースで多少遅れても慌てず、なんとかつないでいけばいいんだと考えることができる。そうなるとチームにも、各区間を走る選手にも精神的なゆとりが出てくるんです。
それが選手個々のパフォーマンスを発揮するうえで重要なポイントになる。5区のエースは、チーム全体に大きな影響を与える存在になっていました」
わずか2.5キロメートルの延長が、歴史的かつ劇的な変化をもたらしたといえる。
このコースが採用された箱根駅伝で生まれたのが「山の神」だった。今井正人、柏原竜二、神野大地の3人の「山の神」が生まれたのは、箱根駅伝の長い歴史のなかで、06年から16年の間に凝縮されている。
5区は、綺羅星のごとくスターが誕生するなどドラマ性が高くなり、劇場型の駅伝になり、さらに盛り上がりが増していった。
だが、距離が長くなったことで様々な問題が生じた。チームの総合成績に対する比重が大きくなり、他区間への興味が薄れていった。
実際、06年から15年までの間、5区で区間賞を獲ったチームは10回中、10回と実に100パーセントの確率で往路優勝を果たしている。総合優勝は10回中、7回であった。
データが示すとおり、各校ともに、「山を制するものが大会を制す」と5区重視に走った。また、低体温症や低血糖を発症する選手が多数発生し、フラフラになってゴールするシーンが増えた。そのため、選手の体を危惧する声が出た。逆に、4区の距離が短いことで、マラソンに順応できる選手の芽を摘み取っているとの声も上がった。
距離が短縮されても5区の重要性は変わらず
区間変更の協議が続いた結果、第93回大会に4区と5区の距離の変更が決まり、5区は、2.4キロメートル短縮されて20.8キロメートルになり、4区は20.9キロメートルに延びた。
「短縮されて、5区の距離は普通になりました。ただ、やはり5区は2区のエース区間同様に重要です。全10区間の貢献割合を100パーセントとした場合、理論上では各区間の貢献点はそれぞれ10%です。
しかしながら、5区の貢献度は2区と同様、10%を超えていきます。年によっては20%、30%に膨れ上がる場合もある。5区は平地の1分を簡単にひっくり返してしまう。往路のアンカーでもあり、翌日のスタートにつなげるところでもあるので、どうしても重視せざるをえません」
大後前監督は、変わらない5区の重要性についてそう語った。
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