味の素が150億円申告漏れ、タイ法人の所得合算せず…国税局「タックスヘイブン対策税制」適用
食品大手「味の素」(東京)が、タイの現地法人の所得を申告していなかったなどとして、東京国税局から2024年3月期までの3年間で計約150億円の申告漏れを指摘されていたことがわかった。外国法人を用いた租税回避を防ぐ「タックスヘイブン対策税制」が適用されるなどしており、法人税の追徴税額(更正処分)は過少申告加算税を含めて約13億円に上ったという。(加藤哲大)
味の素は読売新聞の取材に対し、「不適切な租税回避の意図は一切ない。当局との見解の相違がある」とし、処分を不服として国税不服審判所に審査請求していることを明らかにした。
味の素の説明や関係者によると、問題となったのは、タイでの経理業務などを担う「味の素ビジネスセンター(タイランド)社」(ABCT社)。味の素は、ABCT社とは支配関係になく同税制の適用対象外だと判断し、ABCT社に関係する所得を合算しないまま日本で税務申告していた。
しかし同国税局の調査で、ABCT社は現地子会社「タイ味の素社」の支配下にあり、味の素の「孫会社」として同税制の対象になると判断された。その結果、ABCT社が支配する「ひ孫会社」にも同税制が適用されることになり、ひ孫会社の所得約105億円を合算して日本で申告する必要があったと結論付けられたという。
また、味の素はナイジェリアの完全子会社「ナイジェリア味の素食品社」に対して保有していた約45億円の債権について、急激な為替変動の影響による経営悪化を理由に全額放棄し、特別損失として計上していた。これについて同国税局は、全額放棄する必要性はなく、特別損失分の所得を圧縮していたと判断した。
タイの現地法人を巡る申告に関し、味の素は取材に「タックスヘイブン対策税制が適用されるかどうかの解釈について国税当局と争いがある」とし、ABCT社やひ孫会社の所得を合算する必要はないとの認識を改めて示した。ナイジェリアの債権放棄は、「現地からの撤退も検討した上での合理的な経営判断だ」としている。



















