住民の安全を後回しにした福島第一原発「警戒区域」解除の無責任

しかし、除染やインフラの復旧は後回しで、防犯上のリスクはむしろ高まっている。警戒区域の解除で部外者の立ち入りも容易になったことにより、「空き巣被害が増えるのではないか」(小高区泉沢に自宅を持つ杉義行さん〈72〉)との懸念が持たれている。

小高区では地元住民による3隊(1隊8人)の見回りパトロール隊を編成して平日夜間と日曜祝日終日のパトロールが行われている。だが、約400人のチーム編成による村ぐるみで被害を最小限にとどめている計画的避難区域の飯舘村と比べても、手薄であることは明らかだ。

川内村では旧警戒区域に自宅を持っている住民への身分証明書の交付を開始。飯舘村では村民に通行証を発行しているが、南相馬市では同様の対策を講じる考えはないという。こうしたことから、市役所の無策ぶりに不満を持つ住民は多い。

生活再建を阻む賠償の壁

福島第一原発ではメルトダウン(炉心溶融)を起こした燃料棒のありかがわかっておらず、同4号機の使用済み燃料プールは、再び大きな地震が起きた場合、倒壊する危険性が取りざたされている。原発が再び牙をむいたとき、無事に避難できる保証はない。加えて除染やインフラ復旧の見通しが立っていないこともあり、小高区での生活再建に見切りをつけて、ほかの地域で暮らすことを決断した住民も少なくない。そうした住民の前に立ちはだかっているのが、東電による賠償の壁だ。

東電は4月25日に、警戒区域など避難指示区域見直しに伴う賠償の検討状況について明らかにしたが、新天地での生活再建を望む人にとって十分な額には程遠い。

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