住民の安全を後回しにした福島第一原発「警戒区域」解除の無責任
東京電力・福島第一原子力発電所事故をきっかけに、全住民が着の身着のままでの避難を強いられた福島県南相馬市小高区──。4月16日に災害対策基本法に基づく警戒区域(立ち入り禁止区域)の指定が1年ぶりに解除されたことにより、住民が自由に自宅立ち入りできるようになった(宿泊は禁止)。
警戒区域指定の解除は4月1日の田村市、川内村を皮切りに始まり、人口約1万3000人の小高区や原町区の一部を対象とした南相馬市での指定解除は第2弾に該当する。
だが、自由な立ち入りがようやく実現したにもかかわらず、多くの住民は浮かない表情を見せる。
「警戒区域の指定が解除されても何もいいことはない。放射性物質の除染もやってもらえないまま、自由に出入りしてくださいと言われても、何もすることがない。国のやり方はあまりにも無責任だ」
小高区神山に自宅を持つ松倉憲三さん(63、写真)は憤懣(ふんまん)やるかたない。現在、市内鹿島区の仮設住宅で暮らす松倉さんは警戒区域指定が解除された4月16日以降、原発から12キロメートルの地点にある自宅に7度にわたって立ち入った。だが、「家の中は足の踏み場もないほどめちゃくちゃ。湿気もひどく、とても住める状態ではない。水道は復旧しておらず、トイレも使えない。ゴミの持ち出しも禁止されている」(松倉さん)。
庭先で12マイクロシーベルト
小高区の住民が憤るのには理由がある。政府による区域見直しが、あまりにもおざなりだからだ。