アジアの興隆が続く保証はどこにもない--ブラーマ・チェラニー インド政策研究センター教授
中国は明治日本と同じ道をたどるのか
日本が明治時代に世界列強の地位に上り詰めて以来、世界秩序形成の潜在力を持って出現した非西洋国はなかった。ただし、明治日本と今の中国には大きな相違がある。日本の興隆は、ほかのアジア諸国における市民社会の凋落を伴っていた。19世紀までに欧州がアジアの大半を植民地化していたので、日本を抑え込むことができるアジアの国が残っていなかったのだ。
今日、中国は、韓国、ベトナム、インド、インドネシアなど重要なアジア諸国とともに発展している。中国は日本から世界第2位の経済大国の地位を奪ったが、日本は近い将来においても強国であり続けるだろう。1人当たりGDPでは、なおも日本は中国の9倍豊かであり、アジア最大の艦隊と最も進んだハイテク産業を有している。
日本が世界列強の一角に躍り出た当時は、帝国主義的な征服が後に続いたが、興隆する中国が抱く領土拡張主義的な衝動は、ほかのアジア諸国によってある程度阻止されている。
軍事的には、中国は渇望する領土を手に入れる立場にはない。だが、同国の防衛支出はGDPの2倍近い伸び率を示してきた。また中国の指導者らは、近隣国に対し、領土紛争を仕掛け、強硬な外交政策を進めてきた。
今の中国は、攻撃的な軍事国家となり、アジアと自国に悲劇をもたらした日本と同じ道をたどっているように見える。明治維新は、「富国強兵」のスローガンの下で強力な軍隊を生み出した。この軍隊はあまりに強力となり、文民政府に指図ができないようになってしまった。共産党が権力独占の維持において軍の恩義をますます受けている中国でも、同じことが起きかねない。