アジアの興隆が続く保証はどこにもない--ブラーマ・チェラニー インド政策研究センター教授

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今後も、アジア諸国のパワー力学は流動的な状態にとどまるだろう。たとえば、中国とインドと日本が戦略的な優位性を求めて立ち回っているが、日印間では戦略的な関係が深まり、日印と中国の間では競争が激化することを予想させる形で、3国の相互関係が変化している。

ただアジアが世界で最大の、最も人口が多い、最も高成長の大陸であるからといって、将来がアジアのものだとはいえない。規模は必ずしも利点ではない。アジアはもっと人が少ないほうが、人口規模と水・食糧・エネルギーなどの利用可能な天然資源のバランスがよくなる。

加えて、アジアはGDPの成長を強調しすぎて、成長以外の指標を無視するという過ちを犯してきた。この結果、アジアはより不平等となり、汚職が広がり、国内の不満は高まり、環境の悪化は深刻な問題となっている。さらに悪いことに、アジア諸国の多くは欧米の経済的な価値観を受け入れてきたが、その政治的な価値観を拒否している。

だから勘違いしてはいけない。欧州が直面している課題よりも、アジアの抱える課題のほうが深刻なのだ。中国は発展が必然であるというオーラを放っているが、緊急の課題を地域内に抱えたアジアが世界の成長を主導し、新たな世界秩序を形成することができるかどうかは、まったく不透明なのである。

Brahma Chellaney
インドの代表的な戦略研究家。1989年ジャワハルラル・ネルー大学で博士号取得(国際関係学)。ハーバード大学、ブルッキングス研究所などを経て現職。専門は安全保障と軍縮。近著に『水-アジアの新たな戦場(未邦訳)』。

(週刊東洋経済2012年5月26日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。撮影:今井康一
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