「上陸一号だから、『イチゴちゃん』と名付けました。兄弟のなかで体が大きく、口角が上がっていて、いつも笑っているように見えて、かわいかったな」
シュレーゲルアオガエルは臆病な種で、あまり人に寄ってくることはない。しかしイチゴちゃんは活発な子で、ぴよさんともある程度交流できていた。他のカエルとエサの取り合いをしたり、とにかくよく動く子だったという。
2021年11月のある日、いつものようにエサをあげようとしたとき、ぴよさんはイチゴちゃんのある異変に気付いた。
「首のあたりに、いきなり大きなイボみたいなものができていたんです。慌てて病院に連れていったのですが、原因はわかりませんでした」
原因はわからないが、中に膿がたまっているようだった。塗り薬をもらって、1カ月ほど通院を続けていたのだが……。
「これだけ小さな生き物だと、できることは少ないって、獣医さんにも言われました。知らない場所に連れていかれて、知らない人に触られるのもストレスになったのかもしれません。どんどん痩せていってしまって」
カエルは、体に不調があると、エサを食べていてもだんだん痩せていくという。そしてある日、いつもの通り「おはよう」と話しかけてエサをあげようとすると、すでに動かなくなっていた。いつもの笑顔のまま、イチゴちゃんは静かに永眠していた。
小さな命の喪失が、想像以上につらかった。死因は結局わからずじまいで、ぴよさんは自分の不勉強を責めた。病院に連れて行ったことで、強いストレスを与えてしまったのかもしれない。連れていかなくても、自然に治ったのかもしれないのに。
「病気やけががあっても、自然治癒に任せるという考えもあるかもしれません。それでもやはり私は、飼い主として病院に連れていってあげたい。連れていくタイミングやその後のストレスケアなどを、もっと勉強しなくてはいけないと強く思いました」
別れが教えてくれた、飼育者の責任
イチゴちゃんの亡骸は、室内のプランターに埋葬した。実は、飼育していたカエルが死んでしまった場合、そのまま庭の土の中に埋めることはできない。
飼育下のカエルは、野生のカエルにはない病原菌を持っている可能性がある。そのため外界と地続きの場所に埋めると、野生のカエルに感染を広めてしまう危険があるのだ。これは、金魚や熱帯魚などの魚類も同じ。生態系を壊さないため、飼育者は正しい知識を身につけなければならない。



















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