翻訳家も薦める 文字だけ英語学習に「見る」を入れると劇的に変わる 《ビジュアル》で学ぶ"英語"がこうも話題になる理由
所変わって、海を隔てたお隣、韓国の英語事情をのぞいてみたいと思う。日本を大きく上回る韓国の英語教育への熱量の高さについては、各種メディアで聞いたことがあるひとも少なくないだろう。翻訳者である筆者は、通訳・翻訳の専門の大学院があることからも韓国の外国語に対する意識の高さに注目している。
韓国と英語といえば、ひとつこんな思い出がある。留学中のパリで知り合った韓国の女の子の話だ。彼女は、本当はアメリカで彫金を学びたかったそうだ。しかし、留学について両親に相談すると、「英語圏に行くのなら舌裏の手術を受けること」が条件として提示された。
韓国の家庭では親の言うことは絶対だ。そして彼女の両親は、共にこうと決めたら曲げることはない。子を思う愛ゆえとわかってはいたが、彼女は「怖くてどうしても嫌だったので、急遽ヨーロッパに留学先を変えた」とのことだった。なお、その後も一時帰国のたび、両親は彼女に手術をすすめてきたそうだ。
舌裏の手術とは、舌小帯(舌と下顎をつなぐ薄いひだ)を切除するものである。そうすることで舌の動きが滑らかなり、ネイティヴスピーカーのような英語の発音が容易になるらしい。その真偽と選択の良し悪しはここで判断できないが、なかなか穏やかでない話だ。
教育の進化が成果を上げている韓国
とにかく、そこまでしても子どもに英語力を身につけさせたい熱意を親たちが持っていることは間違いない。その高まりは、外科的な処置のみならず、実質的に英語力を引き上げるための教育にも表れている。そして、教育の進化が着実に成果を上げているのだ。
EF(Education First)の「English Proficiency Index(EPI、英語能力指数)2025」によると、日本は123の国・地域中96位。韓国は48位に位置し、日本を大きく上回っている。さらにTOEIC平均スコア(TOEIC Listening & Reading Test 国・地域別平均スコア2024年)でも、韓国は678点と、日本の564点を引き離す結果を示している。
新学習指導要領に基づき、日本の小学校での本格的な英語教育が始まったのは20年度のことだ。小学校3・4年生で「外国語活動」として、週1コマ程度の頻度で歌やゲームなどを通して英語に親しむことが必修化、5・6年生で「外国語」という教科として教科化された。
一方、韓国では、日本の20年以上も前に英語が教科化されている。1997年以降、小学校3年生から英語教育が必修化された。1年生から英語教育を行う実験校もある。また、民間塾や留学準備も含めた体系的な学習環境が整っており、4技能(聞く・話す・読む・書く)をバランスよく伸ばす教育体制の中で、“単語・文法暗記型”から“体験・ストーリー型”へとシフトが進んでいる。



















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