1989年バブル絶頂期と何が違う? 日経平均5万円でも「サナエバブル」ではない理論的な根拠

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一方、悪いPER上昇で株価が下落するパターンには大きく2つの経路があります。1つ目は、景気後退局面で企業業績が悪化する場面です。PERは株価÷1株当たり利益ですから、日経平均株価を構成する企業の業績が悪化して、分母の1株当たり利益が下がってしまい、PERが上がるパターンです。景気後退場面で見られる現象で、その後、景気後退を織り込んで株価が下落します。

2つ目は、期待先行でPERが上昇する点まではアベノミクス相場や足元の状況と同じですが、その後の企業利益が期待通りに伸びず、1株当たり利益の増加が伴わないことで“期待倒れ”となり、株価が下落してしまうケースです。これがバブル相場と言われるケースになります。

足元の株価は理論的な適正水準

ここで足元の相場に話を戻しましょう。現在、PERは18倍台後半まで高まっていますが、良いPER上昇のパターンに入るためには、この先1株当たり利益がしっかり増えていくことが不可欠です。

今年度(2025年度)の企業業績を全体的に見ると、トランプ関税の影響などから自動車を中心とした輸出企業に厳しい見通しが多いものの、来年度(2026年度)以降はその反動に加えて、サナエノミクス実現への期待も相まって、1株当たり利益は2桁の伸びが見込まれます。この場合に株価の基本式である「1株当たり利益×PER」に基づいて試算すると、PERが17倍まで調整したとしても、日経平均株価の理論的な適正水準はおおむね5万円前後となります。

以上を踏まえると、足元の株価は理論的な適正水準であることから“サナエバブル”ではありません。したがって今後、株価が大きく下げることはないものと見ています。ただし、株価がこの先も5万円を大きく上回り、安定的に推移していくためには、「成長分野への大胆投資」や「家計の可処分所得の押し上げ」を軸としたサナエノミクスの確かな実行が求められます。さらに、さ来年度(2027年度)以降も1株当たり利益が持続的に成長していくことが、その前提として不可欠になります。

吉野 貴晶 マネックス証券チーフ・マーケット・アナリスト 兼 マネックス・ユニバーシティ 投資工学研究学長

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よしの たかあき / Takaaki Yoshino

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で、記録的となる16年連続で1位を獲得した後、国内系運用会社で投資工学開発センター長を経て、現職。社会人として歩みを始めて以来、一貫してクオンツ計量分析、データサイエンス、AI(人工知能)を活用した証券市場の分析に携わる。大学共同利用機関法人 統計数理研究所のリスク解析戦略研究センターで客員教授を兼任。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(青山ビジネススクール)にて客員教授、学術フロンティア・センター特別研究員。経営戦略、企業評価とポートフォリオマネジメントの授業の教鞭も取る。博士(システムズ・マネジメント)。日本ファイナンス学会理事、日本金融・証券計量・工学学会(JAFEE)理事。2025年9月より現職。

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