「下着姿、撮らせてあげなよ」最悪の"いじめっ子"中学2年生女子に迫る「最恐の復讐者」の正体 『子供部屋同盟』6章①

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四号玉のボールは、速度がつくと重く硬い。三度目にボールは奈央の横顔に当たり、平手打ちされたような痛みを覚えて、一瞬目の前が真っ暗になった。

「顔面セーフ! 顔面セーフよ!」

捕球しない限り、狩りは終わらない。この長方形のコートの中で、ずっと的にされ続ける。

次に男子が投げたボールを、奈央は顔面で受けながらも捕球した。ボールを投げた男子はぽかんと口を開く。その彼に向かって、助走をつけて思い切りボールを投げる。

意表を突かれた男子は、あとずさる途中でバランスを崩して尻もちをついた。ボールは男子の腕に当たってコート外へ弾け飛ぶ。そこでチャイムが鳴った。昼休みの終了を告げるチャイムだ。木村が駆け寄ってきて、明るい声で言う。

「すごいじゃない! 楠木さんも、やればできるじゃない!」

奈央は荒い呼吸のまま、じんじんと痛む目頭を右手で押さえた。左目だけで見る狭い視界の中に、木村の顔が見える。木村は恍惚としたようなうっとりとした瞳で、こちらを見つめていた。

また一緒にドッジボールやろうね、そう言い残して、木村は校舎へ駆けていく。

奈央は顔から右手を放して、手の平を見る。瞼が切れたのか、手の平には紅色の鮮血が伸びていた。

保健室で保健の先生に目頭を消毒してもらいながら、奈央は四月の学級会を思い出していた。

学級委員長に立候補した木村明美

二年二組の担任は、安田という新任の男性教師だった。その安田先生が、最初の学級会で学級委員長の立候補を募った。一年のときは、誰も立候補しなかった。だから長い話し合いの末に、各班から一名の候補者を出して多数決を採った。

同じように、責任を押しつけ合うような長い話し合いになるだろうと思った。真っ先に手を挙げる生徒がいた。木村明美だった。他に挙手はない。それであっさり学級委員長に決まってしまったのだ。

木村はたぶん、内申点のために立候補したのではない。責任ある役割を務めたかったわけでもない。じゃあなんのために──。

「女の子なんだから、あんまりやんちゃしちゃダメよ」

何も知らない保健の先生は、呆れたような笑みを浮かべる。

脱脂綿のアルコールが染みて、奈央の瞳にはわずかに涙が滲んだ。

高橋 弘希 小説家

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たかはし ひろき / Hiroki Takahashi

小説家。青森県十和田市生まれ。2014年、『指の骨』で第46回新潮新人賞を受賞。2017年、『日曜日の人々(サンデー・ピープル)』で第39回野間文芸新人賞を受賞。2018年、『送り火』で第159回芥川賞を受賞。他の作品に『朝顔の日』『スイミングスクール』『高橋弘希の徒然日記』『音楽が鳴りやんだら』などがある。

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