木村は切れ長の目をしていて、薄い唇の端には点々とニキビがある。黒く長い髪は、いつも首の後ろで一つ縛りにしていた。
木村は奈央と同じ第六班で、班長も兼任している。学級委員長でもあり、班長でもあるからか、木村は何かと奈央を庇った。
給食当番でシチューの入った重い食缶を持たされたときは、一緒に手伝ってくれた。教室掃除中に男子がふざけてワックスをかけようとしてきたときは、間に入って止めてくれた。クラスの女子に話しかけて露骨にそっぽを向かれたときも、近くにいた木村が代わりに返答してくれた。
そしてある日の昼休み、いつものように教室の机に突っ伏して寝た振りをしていると、木村に肩を叩かれた。
「楠木さんも一緒に、校庭でドッジボールをやろうよ」
奈央は元々、ドッジボールが好きではなかった。ボールを捕ることも、相手に投げることも下手だった。
その昼休みのドッジボールでも、ボールから逃げてばかりいた。内野の生徒は一人、また一人と減っていき、ついには奈央が最後の一人になる。
次に男子が投げたボールは、奈央の側頭部に当たった。頭がぐらりと揺れて、ボールはどこかへ弾け飛んでいく。でもこれで試合は終わったのだ。
「顔面セーフ」という狩り
奈央は片手で頭を押さえて、苦笑いを浮かべて、コートの外へ駆けた。すると外野にいた木村が、大きな声で言う。
「楠木さん、なにしてるの! 早くコートへ戻って!」
戸惑いつつ木村を見る。
「顔面セーフ! 顔面セーフよ!」
頭部や顔にボールが当たった場合は、ペナルティとしてセーフになるのだ。でもそのペナルティのせいで、奈央は外野へ出られなかった。
奈央が内野へ戻ると、相手コートの男子は明らかに首から上を狙ってボールを投げてくる。どうにかボールを避(よ)けると、外野の生徒がボールを縦横無尽に回していき、奈央が隙を見せたところで、再び頭部めがけてボールを投げた。ボールはまた側頭部に当たり、頭上へ弾け飛んだ。木村が甲高い声で叫ぶ。
「顔面セーフ! 顔面セーフよ!」
このとき初めて、彼らはドッジボールをしているわけではないと気づいた。木村を首謀者として、自分を的にした狩りをしている。



















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