「果てしなきスカーレット」の沈没と「ズートピア2」の大ヒット 日米でアニメに求められる"決定的な違い"

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

それでも、『トイ・ストーリー』シリーズのスピンオフ『バズ・ライトイヤー』の主人公の声に、人々が期待したティム・アレンではなく、新たにクリス・エヴァンスが雇われたことには、反感も出た。

『トイ・ストーリー』のバズがおもちゃなのに対し、『バズ・ライトイヤー』の主人公は人間で、同じキャラクターではなく、そこも踏まえたキャスティングだったのだが、混乱を起こしてしまったようである。

この映画はピクサー作品にしてはがっかりの興行成績しか稼げず、赤字に。だが、主演に有名スターを選ばなかった今年公開のピクサー最新作『星つなぎのエリオ』も赤字だったので、そこは一番の原因ではなかったのだろう。

だが、こうした事情は、あくまで、アメリカのメジャーなアニメーション映画についての話だ。

アメリカの業界人はアニメの作家性も重視

最近、明らかに国際化したアカデミー賞の会員は、昨年は宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』に、今年はラトビアのギンツ・ジルバロディス監督の『Flow』に、長編アニメーション賞を与えている。

これらは奥が深く、見る人によって解釈が変わる複雑な映画。アメリカでも作家性があるアニメーション作品を、業界人は認めている。だから、これまでもそうだったように、日本が誇る文化である日本のアニメ映画がアメリカで大きな賞を取ることは、これからもあるはずだ。

一方で、アメリカの大衆に受けるメジャー系のアニメーション映画にも良い作品は当然あり、それらと闘うことになる。そのどちらが良いというわけではない。どちらも存在意義があり、求められている。

ただ、場所が変われば、観客が持つ期待や思い入れが違ったりするもの。海を超えたこの週末の興行成績は、あらためて思い出させた。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。
X:@yukisaruwatari
 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事