ほぼ全上院議員が汚職に関与?フィリピンの現実/上下院議長・主要閣僚が辞任・解任でマルコス政権は存続の危機

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一連の騒動は経済にも大きな打撃を与えている。25年第3四半期の国内総生産(GDP)成長率は前年同期比4%と、第2四半期の5.5%から大きく減速した。4年ぶりの低水準だ。1~9月の成長率も5%と前年同期の5.9%を下回り、政府が通年目標とする5.5~6.5%の達成は無理とみられている。株価も年初から10%を超す下落となっている。

変わらぬ腐敗の構造、汚職はフィリピンの「文化」か

私は、新聞社の特派員として1990年代半ばにマニラに駐在していた。そのころもフィリピンの政治家や金持ちは日本人の想像を超える豪奢な暮らしをしていた。腐敗の構図がその背後にあることは容易に想像できた。

私は疑問を感じていた。日本人が汗水たらして収めた税金を政府開発援助(ODA)としてこの国につぎ込みことに意味はあるのか、この国の政府がまず途方もない金持ちから取り立てた税金を事業にあてることが先ではないか、本当にこの国を思うなら援助などせずに自立を促すべきではないか、と。

日本の援助機関の幹部にぶつけたところ、「そうしたこと(税金をきちんと取り、分配する)ができる国は途上国ではないのです。できないから途上国なんです」と諭された。

日本政府のODAはその後も途切れることなくこの国につぎ込まれている。国際協力機構(JICA)は長年、マニラ首都圏の洪水対策事業を援助してきた。だが成果は見えづらい。

30年経った今も汚職と腐敗をめぐる状況に基本的な変化はない。キックバックのシステムに染まっていない国会議員はほとんどいないだろう。途上国のままなのだ。

大統領の父で、1965年から20年余り独裁体制を敷いた元大統領(シニア)と夫人のイメルダ氏は腐敗と汚職の世界的なアイコンだった。86年の政変で現大統領やアイミー氏も含む一家はアメリカに追放された。

その後の歴代大統領はみな「腐敗防止」「汚職追放」を掲げて政権についた。ところがエストラダ 、アロヨと2人の大統領経験者や数人の上院議員が汚職などで逮捕されたり刑事訴追されたりした。その後、恩赦や無罪判決でみな自由の身となり、いずれも政界に復帰している。

マルコス家も帰国を果たした。イメルダ氏は汚職の罪で有罪判決を受けても一日たりとも服役はしていない。一家は父親の遺産の5000億ペソにのぼる相続税を払っていない。それでも圧倒的多数の国民はその息子を大統領に選んだ。

さて今回はどうなるか。マルコス氏は腐敗との決別を宣言している。「もういい加減にしろ」とのプラカードを掲げてデモ行進する若者らの思いに政治や社会はこたえてほしいと願う。しかしながら楽観的にはなれない。

大規模公共事業に限らず、交通違反の取り締まりから各種免許更新、税関通過、徴税、裁判まであらゆる手続きで汚職は蔓延し、大統領や政府、国会議員のレベルから州、市町村、最小行政単位のバランガイの隅々まで腐敗が根を張っている。国民の多くも何らかの形でおこぼれを受け取ったり、当てにしたりしている。その構造はもう文化ともいえる域に達しているように見えるからだ。

柴田 直治 ジャーナリスト、アジア政経社会フォーラム(APES)共同代表

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しばた・なおじ

ジャーナリスト。元朝日新聞記者(論説副主幹、アジア総局長、マニラ支局長、大阪・東京社会部デスクなどを歴任)、近畿大学教授などを経る。著書に「ルポ フィリピンの民主主義―ピープルパワー革命からの40年」、「バンコク燃ゆ タックシンと『タイ式』民主主義」。

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