「ローカル鉄道演劇」の旅!舞台は走る列車内 「グルメ列車」の次に来るのはコレだ

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 演劇人にも、地域の活性化を目指す人々にもメリットのある「ローカル鉄道演劇」だが、最大の弱点は採算性だ。舞台となるキハ3710形は座席定員が55人で、1公演につき30人ほどしか鑑賞できない。

1日3公演が限度で、最大でも100人以下と、都内の小劇場1回分程度の観客しか収容できない計算だ。公演期間中の滞在費も必要で、チケット代とグッズ販売だけでは商業的に成立させるのは難しい。

「まちあるき」では地元で親しまれているスポットへ。この精肉店は登場人物の思い出の店という設定

幸い、ひたちなか海浜鉄道は沿線地域によるバックアップ体制が充実しており、吉田千秋社長の紹介で地元金融機関など複数の企業から協賛を得ることができた。しかし、全国どこでも同じような協賛が得られるとは限らない。

町おこしの視点に立てば、継続性も課題と言える。東京を拠点とする中堅劇団にとっては、ローカル鉄道演劇は年間2本程度が限界であり、ひとつの地域で継続して公演を行うことも難しい。せっかく演劇を通じて地域の魅力を掘り起こしても、たった1度の催しで終わっては、効果は限定的だ。

地域起こしのトレンドになるか

銚子市では、ローカル鉄道演劇の公演がひとつのきっかけとなり、「まちあるき」で地域の魅力を再発見する取り組みが活発になった。詩や小説を朗読しながら、気ままに散歩を楽しむ試みや、まちあるきを案内する「観光コンシェルジュ」も誕生している。こうした継続的な取り組みにつなげられるかが、「ローカル鉄道演劇」を通じた町おこしのカギとなるだろう。

あるいは、一歩進めて地元の劇団による常設公演という道も考えられるのではないか。週末ごとに、その鉄道と地域の魅力を織り込んだ芝居を上演し、物語に絡めたまちあるきを楽しんでもらえば、新しい旅の提案になるはずだ。

緑川氏は、「ローカル鉄道演劇は通常の演劇とはノウハウが全く異なります」としたうえで、「まずは地域の方々と一緒にやってスキルを受け継いでいただくところから始めたい。その上で、私たちはもっと多くの鉄道で公演を実現させたいです」と夢を語った。

今、全国で地域の特産品を活かしたグルメ列車が人気を呼んでいる。それと同じように、地域の知られざる魅力を掘り起こす「ローカル鉄道演劇」が、地域起こしのトレンドとなるかもしれない。

シアターキューブリックの「ひたちなか海浜鉄道スリーナイン」は、今週末、11月14・15日にも公演を行う。
 

栗原 景 ジャーナリスト

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くりはら・かげり / Kageri Kurihara

1971年東京生まれ。出版社勤務を経て2001年独立。旅と鉄道、韓国をテーマに取材・執筆。著書に『新幹線の車窓から~東海道新幹線編』(メディアファクトリー)、『国鉄時代の貨物列車を知ろう』(実業之日本社)等。

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