「ローカル鉄道演劇」の旅!舞台は走る列車内 「グルメ列車」の次に来るのはコレだ

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シンガーソングライター・オオゼキタク氏の生演奏が物語を盛り上げる

走る列車で演劇を上演したいと考えたのは、シアターキューブリックで脚本・演出を手がける緑川憲仁氏だ。

「2000年の旗揚げ以来、都内の劇場で公演をしてきましたが、劇場に閉じこもって演劇ファンに見せるだけでは社会の役に立たないと感じていました」(緑川氏)

劇場から飛び出して演劇を積極的に広めたい。走る列車の中で、列車を舞台にした演劇を披露したら面白いのではないか。そう考えた緑川氏は2008年、千葉県の銚子電鉄に企画を提案した。

その時電話を受けたのが、当時銚子電鉄の社員で、現在は総務省地域創造アドバイザーとして「まちあるき」の監修を手がける向後(こうご)功作氏である。「突然の申し出でしたので、すぐには受けず、こちらから要望を出しました」(向後氏)

地元の魅力を気づかせてくれる

それは、「お芝居を通じて地域との関わりを作ること」。そこから「終着駅で折り返す間に”まちあるき”を行い、それが後半の物語のヒントになる」というアイディアが生まれ、「銚電スリーナイン」が実現した

「やってみると、地域の人たちから『自分たちの地元の魅力を気付かせてくれてありがとう』と感謝されたんです。地域を盛り上げるという発想は僕らにはなく、上演してみて初めて気づかされたことでした」(緑川氏)

勝田駅のホームが受付。並んだ時からすでに物語は始まっている

こうして、「演劇をもっと広めたい」という演劇人の思いと、「演劇を通じて地域を元気にしたい」という沿線住民の思いが合致し、ローカル鉄道演劇は各地の鉄道で公演を重ねていった。

地域と演劇、双方の良さを伝えるため、事前の取材は綿密に行われる。町おこしのカギとなる「まちあるき」は、敢えて観光地ではない阿字ヶ浦の住宅地を選んだ。まちあるきを監修する向後氏によれば、「観光情報の詰め込みではなく、案内人と地域の方々の交流を大切にしている」という。

観客の半分は地元の人。役者と地域住民が交流することによって、地域の人々にも様々な"気づき"が生まれるというわけだ。緑川氏も「旅行者はもちろん、地元の方にも見てほしい」と語る。

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