人口約1万1000人の北海道浦河町でインド人《2015年13人⇒2025年327人》急増の"切実な事情"
日高地方で外国人が急増したのには、当然理由がある。ここでは、その背景にふれるとともに、行政はこの状況にどう対応したのか? 町の人たちはどう受け止めているのか? さらには町で始まった新しいビジネスなど、地元の人たちの思いや行動について語っておきたい。
「だって馬の仕事って、機械化できないじゃないですか?」
馬産地で働く外国人が増えた理由を、日本人の牧場スタッフが端的に言った。
なるほど、と私は頷いた。
牛を飼う酪農家の牧場では、搾乳ロボットの導入が進む。乳が張って搾ってほしくなった牛がレーンに入ると、ロボットがセンサーで乳頭の位置を確認。そこにチューブがセットされて搾乳が始まる。牛が自らの意思で動くので、人間の都合で搾られるよりもストレスが少ないという。給餌(エサやり)や牛舎の掃除にロボットを使う牧場もある。
しかし馬は、俊敏で激しい動きをする。機械に任せられる作業はきわめて少ない。人の手が絶対に必要だ。それなのに、馬産地にはその「手」がなかった。
馬の文化を守るためには、人を呼んでくるしかない
浦河町は人口およそ1万1000人(2025年6月現在)。私がこの町で車を走らせると、古いカーナビが時々「この先、踏切があります」と伝えてくる。だが、私が一時停止することはない。この町を通っていたJR日高本線は2021年、全線の約8割が廃止となった。そこに踏切はなく、あるのは撤去されずにさび付いた線路のみだ。過疎と高齢化が加速している。
「(牧場の)看板は変わったよね。畳んだ牧場を、他のところが買い取って」
そう話すのは、谷川貴英さん(59歳)。谷川牧場は、史上初の5冠馬シンザンが余生を過ごした牧場だ。日高にはJA(農業協同組合)とは別に、競走馬の生産牧場だけで組織する「日高軽種馬農協」がある。各牧場への技術指導のほか、年に5回、馬のセリを開催している。谷川さんはその副組合長を務める。
「日高の生産牧場、以前は1000軒ぐらいあったんだけど、今、700切って690ぐらい。それぞれの牧場に後継者がいるかいないかを調査して、将来どうなるかを試算したんです。10年ぐらいしたら、350から380ぐらいに減っちゃう可能性が高い。大変ですよ、今残ってる牧場の300軒以上が、なくなっちゃうかもしれないんだから。せっかくご先祖様が苦労して開墾した土地なのにさ」
ご先祖様から受け継ぐ馬の文化を守るためには、よそから人を呼んでくるしかないのだ。
若い労働力に満ち溢れた国があった。インドだ。



















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