探求〈上・下〉 エネルギーの世紀 ダニエル・ヤーギン著/伏見威蕃訳 ~キーパーソンの活躍ぶりを赤裸々に描き出す
1991年に刊行された『石油の世紀』と本書とを比べると、中国をはじめとする新興国がエネルギーの需給両面でプレゼンスを高めていることがよくわかる。それに引き換え、日本の影は薄い。省エネルギーに関して日本の「トップランナー方式」に光を当てていないなど、さすがのヤーギン氏のチームにも取材不足があるなと思わせる部分もあるが、より根本的な問題は、資源小国で経済大国である日本が、エネルギー資源の海外での開発・生産で大きな成果をあげていないこと、地球温暖化対策に関して技術輸出(たとえば石炭火力発電技術の海外移転)による海外での二酸化炭素排出量削減という「切り札」を活用していないこと、などの点に求めるべきであろう。
本書の魅力を高めているのは、上下両巻の冒頭に、多数の口絵写真が掲載されていることである。本文で描かれるキーパーソンたちの躍動のいくつかの場面が、そこでは画像として再現されている。ヤーギン氏が、「謝辞」の中で、「口絵写真は、それ自体が一大プロジェクト」で「それだけで物語として成り立」っていると胸を張っているのも、うなずける。
Daniel Yergin
国際的ノンフィクション作家。米ケンブリッジ・エナジー・リサーチ・アソシエーツ会長。エネルギー問題や国際政治、グローバル経済に詳しい。著書に、ピュリツァー賞を受賞した『石油の世紀』のほか、『市場対国家』『ロシアの時代』など。
日本経済新聞出版社 上2415円 508ページ
日本経済新聞出版社 下2415円 508ページ
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