"怪物"江川卓が与えた衝撃度と余波「誰しも認めた類稀なる才能」は、いかに他人の人生までも狂わせたか

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前代未聞の記録をひっさげ、甲子園に初見参した江川はどんなピッチングをするのか。本物なのか、それともただの張り子の虎なのか。出場選手たち、報道陣、野球関係者が皆一同関心を寄せていた。

開会式直後の第一試合、バットに掠っただけで大歓声

開会式直後の第一試合作新対北陽戦。

後攻の作新は江川が投じる一球目が選抜甲子園大会の幕開けとなる。まるで江川自らの手でこの選抜甲子園大会を幕開けさせるために野球の神様が仕組んだようだ。粋な計らいだ。開会式直後のもっともプレッシャーがかかる第一試合で、相手は出場30チーム中最高のチーム打率三割三分六厘、強打を誇る地元北陽。お膳立てはすべて揃った。

3月27日午後10時35分、試合開始のサイレンが高らかにこだまし選抜甲子園大会が開幕した。182センチ、82キロの巨躯から外角低めに唸るような剛速球が放たれた。

「ストライ〜ク!」

サイレンが鳴り終わるとともにかぶせるように球審の声が高らかに鳴り響く。一直線に輝かしい未来へと通ずる第一球。それに反してマンモススタンドは静寂のまま。まだ完全な陽春とはいえず羽織ものを手放せないなかで、ミットを切り裂くような乾いた音と球審のストライクコールのみが聞こえる。「おぉぉぉ」スタンドが遠慮がちにざわめく。今ままで見たことのない球に観客はただただ呆気にとられている。

初回先頭打者の冠野典久は球場を飲み込んでしまうほどの豪速球に手も足も出ずあっけなく三振。二番慶元秀章(元近鉄)とすれ違う際に真っ青な顔で「速くないわ」と耳打ちする。球場はまだ静まり返っている。

※写真はイメージです(筆者撮影)
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