【家賃ゼロ管理人のリアル】定年後も働きたい移住夫婦に「最適すぎた」東京の住み込み仕事事情

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今心配なことといえば、宮城にまだある2つの自宅の存在だ。川崎町の自宅に加え、今は大河原町の家も貸している。「家賃収入が月12万円ほど入るのはいいのですが、ずっと持っているわけにも行かず、どのタイミングで売ろうか考えています。子どもたちも地元に帰る気はなさそうですし、ここは早く考えないといけません」。

もうひとつは健康である。管理人の仕事もやはり健康であることが重要だ。寮の電球交換は脚立に乗ってやるのだが、年齢を重ねるとこの作業が地味ながら大変だ。「昨日も5、6カ所の電球をまとめて交換しました。まもなく全部LED化されると思いますが、交換されるまでは続ける必要があります」。

万が一の時の「高齢者転倒リスク」も

こうした「現場」での管理人業務の場合、やはり「転倒リスク」を完全に払拭するのは難しい。万が一転倒すると高齢者の場合は動けなくなるケースも多く、リスクを抱えたまま日々の仕事に取り組んでいる。

宮城でがんの手術をした泰男さんは、東京に来てからも3回の入院を経験した。1回目が15年の膀胱炎。2回目が糖尿病の検査入院で、これはコロナ禍のとき。3回目が今年6月、肺に水がたまったことで入院した。がんについてはその後も転移などはなく、糖尿病の検査の時は大腸にあったポリープも切除。肺が水にたまったときは抗生物質を飲み、そのおかげか肩の恒常的な痛みもなくなった。

「いずれも大事には至りませんでしたが、やはり健康でないと動けませんし、もし管理人の仕事ができなくなれば今の家は出て、新居を探さなくてはなりません。今は嘱託社員ということで社会保険も入っているので医療費もかからずいいですが、家賃も含めてかなり大変になることは間違いありません」。

管理人を長年やっていると、町中にいても「この人は同じ仕事だな」というのがわかるようになるという。「月に1回銀行の寮の管理人を集めたオンライン会議があるのですが、似たような外見や性格の方が多い。管理人はかなり信頼関係で成り立っている仕事なので、そのあたりの人格が自然と出てくるのかもしれません」

今は昔の管理人のように入寮者と交流したり飲み会をやったりすることはなく、極力交流はしないという。70歳を過ぎた今も自分に最も適した仕事を地道に続け、家族との関係も良好な樫山さん。「東京移住」という大きな決断は、人生にさらなる彩りを与えている。

東京“老後”移住
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岩崎 貴行 ジャーナリスト・文筆家

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いわさき たかゆき / Takayuki Iwasaki

1979年埼玉県生まれ。2003年早稲田大学政治経済学部卒業、同年日本経済新聞社に入社。政治部、金沢支局、社会部を経て、2013~2020年文化部で音楽(ジャズ・クラシックほか)や文芸などを担当。さいたま支局キャップ、地域報道センター次長も務めた。2024年9月に同社を退職し、同年10月から出版社勤務。専門は音楽を中心とする芸術文化で、音楽雑誌やネットメディアなどへの寄稿多数。東日本大震災、福島第1原発事故などの取材に関わった経験から、環境問題、地域振興などへの関心も高い。

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